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<link>http://tabaru.9syu.net/case/case.htm</link>
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<language>ja</language>
<pubDate>Fri, 29 Aug 2008 11:15:05 +0900</pubDate>
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<title>ペット豆知識Vol.9 諦めていませんか?、あなたのペットの口臭 -究極の歯周病予防法-</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/23.htm</link>
<description>　診察中、飼い主さんが「うちの子、口臭いのよ〜。ごめんね〜。」と言っているのをよく耳にします。にっこり笑ってこっちを見ているワンちゃん、、、、、おぉ。。。
　分厚く頑丈そうな歯石が付き、歯が2倍になったようなワンちゃんは決して珍しくありません。というより、中高年齢のペットできれいな歯を持つワンちゃんを見ることは滅多にありません。
　
　そもそもこの歯石はどのような機序でできるのでしょうか。口の中は常に唾液で潤わされています。唾液は消化を助けたり(唾液アミラーゼ)、口から入ってくる病原体からワンちゃん・猫ちゃんを護っています。その唾液が歯の表面に膜を作り、そこに口腔内の細菌がコロニーを形成しプラーク(歯垢)を作ります。プラークは舌の運動、飲水では除去できず、歯肉炎や歯周炎の原因となるのです。また、食事の食べカスはプラーク蓄積の原因となったり、炎症を悪化させます。このプラークが石灰化すると歯石となります。

　このようなメカニズムで歯石が形成されると、まず気になるのは「口臭」です。口が臭くなることを嫌って、飼い主さんは色々なことを試みます。缶でなくドライフードを与える、ガムやおもちゃを与える、ガーゼでこする、綿棒でこする、歯ブラシで磨く・・・・・などなど、色々ありますが、何もしないよりはマシですが、完全に歯石を予防できる術は無いと言って良いでしょう。毎日毎日少しづつ、確実に歯石が増え、歯肉炎→歯周病へと発展します。しかも、ガムやおもちゃは運が悪ければ奥歯に挟まったり、丸飲みして食道に詰り(食道梗塞と言う)、それこそ”夜間病院”に直行することになりかねません。

　彼の手此の手(あのてこのて)で頑張ってはみるものの、どうも上手くいかないのが「犬・猫の歯石」の常です。繰り返しますが、歯石は放って置くと歯肉炎となり、それが歯周炎に進行し歯槽骨を溶かして歯槽膿漏までおよんで、ついには皮下に膿を貯め頬が膨らみ顔が変形します(歯槽膿漏に起因する皮下膿瘍)。また、ろう管(フィステル)という管を形成し、皮膚に穴が開きそこから膿が出てきます。ここまで来ると、抜歯を行い、皮下膿瘍がひどい場合には皮膚と口腔内に一定期間チューブを留置しなければなりません(ドレナージ)。うちの子は大丈夫と思われるかもしれませんが、よく遭遇する一般的な病気です。

　口臭はその限度を超えると、ペットとのコミュニケーションやスキンシップに支障を来たします。ではどうすればよいのでしょうか。何かよい解決法はあるのでしょうか。

　ここからが今回の「ペット豆知識」の本題です。歯石に立ち向かうため、たばる動物病院では人間用のハンドスケーラーを推奨しています。使い方は簡単です。

?まず、わんちゃん猫ちゃんに口に触ることに慣れさせます。毎日、テレビを見ながら、朝起きたら、おやすみ前に、口に触り少しずつ慣れさせましょう。
?次のステップではガーゼや綿棒で歯を擦りましょう。
?それにも慣れてきたら歯ブラシで磨いてみましょう。
?ここまでくると、後は歯ブラシをハンドスケーラーに持ち替えるだけです。週に一度、一本ずつ、気が向けば二・三本ずつ、カリカリ・シャリシャリ・ジョリジョリ・・・とスケーリングしましょう。歯石になる前のプラークの状態ではハンドスケーラーで簡単に取ることができます。慣れてしまえば横たわって寝ながらにしてスケーリングが可能です。
　
　特に、子犬や子猫ではスケーリングに慣れやすく、始めるなら今すぐです。成犬ではちゃんと「しつけ」られていれば、意外と簡単に練習に突入できます。おとなしい子ではいきなりハンドスケーラーを使用することもできます。既にカチカチの分厚い歯石が付いてしまっている場合には、ハンドスケーラーでの歯石除去には限界があります。歯石の付着が重度のケースでは、一度、全身麻酔下で超音波スケーラーを使用して歯石除去した後にハンドスケーラーを使用されることをお勧めします。

　また、元々人間用のため、こっそり自分用に買われてもいいです。歯垢や黄ばみまでもがきれいに取れます。。。♪

文:ペンネーム「ポニョ」。(ドクター小川の夏季休暇のため)




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<pubDate>Thu, 28 Aug 2008 13:05:18 +0900</pubDate>
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<title>ペット豆知識 vol.8-犬のレプトスピラ症・台風シーズンは要注意-</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/22.htm</link>
<description>　2006年8、9月に宮崎県の県北を中心に8名ものレプトスピラ症感染者が相次いで報告され、新聞でも報道されました。2006年の全国で確認されたレプトスピラ症感染患者の数は27人で宮崎県が約3分の1を占めています。「風土病」と言ってもいいくらいの疾患です。
　レプトスピラ(Leptospira)とは、細菌と原虫の中間のような生物とされ、病原性のもの(Leptospira interrogans)と非病原性のもの(Leptospira biflexa)の二つに大きくわかれています。その病原性レプトスピラのなかでも200種以上も存在し、非常に多様な微生物であるのが特徴です。
　しかも、このレプトスピラという生物、げっ歯類(ネズミなど)を中心としてほとんどすべての哺乳類に感染することができる、微生物界では非常に優秀な病原体でもあります。したがって、人間界では非常に迷惑極まりない病原体であり、国際レプトスピラ症学会では少なく見積もっても年間30〜50万例のレプトスピラ症が発生しているだろうと推測しています。日本では70年代以降激減したとはいえ、現在でも沖縄を中心とした西日本地域で散発的な発生が起きており、ここ宮崎でも前述のとおり2006年に8例ものレプトスピラ症患者が発生しました。もちろんこれは日本で断トツ(断然トップ)です。
　すこしその宮崎の話をすると、8名はいずれも53〜77歳の男女で、発熱、黄疸、出血傾向、腎不全の症状を呈し、その後のサーベイランス調査でいくつかの共通点が見つかりました。

・農作業をしている
・手指に傷がある
・ネズミと接触した
・犬の所有
・牛や豚を管理している

　これらの作業はいずれもゴム手袋などの着用はなく、直接の接触によって感染したと考えられます。
もうすこしレプトスピラに関するヒントを出します。その地域での野生イノシシ、シカの抗体保有率はそれぞれ10%、23%でした。同地域の野鼠からは、患者から分離されたレプトスピラと同型の菌が分離され、さらに患者らは農作業中に水道や井戸水、水田との接触をしていました。

　以上からわかる通り、以下はすべてレプトスピラ症の感染リスクとなりえます。
1)保菌動物の尿で汚染された場所(土中=畑や田、庭)での作業
2)農作業や下水、水たまり、台風あとの土砂
3)ネズミとの接触
4)家畜の飼育
5)と殺場施設や、食肉処理場での作業

　レプトスピラは、げっ歯類をレザボアReservoir(自然宿主)としており、主に肝臓と腎臓で増殖し、菌は尿中に排泄されます。尿は土壌や沼、水溜りに混ざり、菌はそこで発育します。台風などが来ると、それらは土砂として流れ、汚染は拡大します。人間や犬がその水や土壌に触れ、偶発的に口の中に入ったり手指に傷があったりすると、菌はそこから体内に侵入し、動物の腎臓や肝臓で増殖を始めます。台風などの大水で側溝や溝(どぶ)が溢れ、鼠の塒(ねぐら)が無くなり、人間の生活場所を徘徊し、排泄します。これが台風時にレプトスピラ症が多い理由なのです。
　IASR(Infectious Agents Surveillance Report)によれば犬では県内各地で2004年に48例、2005年にも48例、2006年には49件のレプトスピラ症が発生しています。いずれも台風との関連も考えられ、秋での発生件数が最大となっています。レプトスピラ症は71ある届出伝染病の一つですが、本症の確定診断には困難を要する事もあり、犬での実際の感染数や死亡症例数は上記よりも多いことが想像されます。
　日本で常在する犬へ感染する代表的な血清型は以下があります。
L. icterohaemorrhagiae・・・超急性型(黄疸型)
L. canicola・・・急性または亜急性型(出血型)
L. autumnalis、hebdomadis、australis ・・・秋疫病(あきやみ病)
　黄疸型と出血型は致死率も高く、特に黄疸型では発症後数時間から数日で非常に高い致死率を示します。総じて腎炎、肝障害がおき、感染から約1週間で発病します。完治しても数ヶ月から数年の間尿中に菌を排出しつづけ、感染拡大への助長となります。猫でも感染しますが、発症するのは稀だと考えられています。
　治療は抗生物質と適切な対症療法になります。抗生物質はペニシリン系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系の一部に感受性があり、特にストレプトマイシンに感受性が高いといわれています。そして、脱水の補正、肝臓と腎臓に対する投薬を行い治療を管理します。
　そして、もちろん感染した犬から人間に感染することもありますので、我々獣医師や動物に携わる業種の従事者を含め、飼い主の方は非常に慎重に接触する必要があります。特に血液や尿の処理には要注意です。
　さて、それだけ重大な病気なら罹(かか)らないようにしてしまえばいいわけです。ワクチンがあります。もちろん人間用のワクチンもありますが、犬にも有効なワクチンがあります。当院では9種混合ワクチンを推奨しており、以下の病気を予防できます。
1)犬ジステンパー
2)犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型)
3)犬アデノウイルス2型
4)犬パラインフルエンザ
5)犬パルボウイルス感染症
6)犬コロナウイルス感染症
7)犬レプトスピラ感染症(コペンハーゲニー)
8)犬レプトスピラ感染症(カニコーラ)
9)犬レプトスピラ感染症(ヘブドマティス:秋疫)

　7、8、9はすべてレプトスピラであり、9種ワクチンのなかの三分の一がレプトというのは、どれだけ大事な予防なのか非常に説得力がありますね。もちろんワクチンを打ったからといって完全に100パーセント予防できるかと言われれば、答えはNOですが、犬にとっては非常に大切なことです。フィラリアに加え、年一度のワクチンを必ず接種するようにしましょう。

　最後に人間には予防接種をしないのになぜ犬だけ注射するのか、という疑問をもつ方も多いと思います。ズバリ答えはこうです。犬は散歩に行くとき必ず裸足です。パッドの裏や皮膚に傷のあるものも少なく有りません。散歩中に水溜りの水を飲むもの、土を口にするもの、動物の死骸を喰うもの・・・などレプトスピラ菌に接触する機会は人間より多い筈です。一昔前は、猟犬の病気と言われた時代も有ります。保菌者である野鼠や猪、鹿、狸、そして感染から快復した犬が、山中の水溜りに集い、そこにレプトスピラ菌を残して去るのです。喉の渇いた猟犬はレプトスピラ菌に濃厚汚染された水溜りで水を飲んで、本症に罹るのです。年1回の接種が推奨されていますが、実際の効果は6〜8ヶ月とされています。鼠の多い処に住んでいるとか、最近近所の犬が罹ったという様なことが有れば、年2回の接種が望まれます。前述しましたが、猫への病原性は低いので接種は不要です。

　幸い、今年はまだ台風が来ていません。古来より、立春から数えての210日頃が台風の多い時期とされています。近年はほとんど耳にしなくなった”台風のメッカ(銀座)・宮崎”は、多分に死語ではないでしょう。今からが油断大敵です。大水後の犬の散歩など、注意を怠らないように!

文:小川篤志

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<pubDate>Fri, 22 Aug 2008 21:25:58 +0900</pubDate>
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<title>ペット豆知識 vol.7 -外耳炎は治る疾患です!-</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/21.htm</link>
<description>　立秋とは名ばかり、まだまだ猛暑の真夏日が進行中です。「うちの犬もこの夏を超えられれば、あと一年寿命が延びる・・・・・」とは良く聞く言葉です。我々獣医師も、心臓病や気管虚脱症などの症例では、一部分同感するところです。
　
　梅雨から初秋にかけての高温・多湿の時候に多い病気の一つが、今回のテーマである「外耳炎」です。冬場は小康状態であった外耳炎がこの時期再燃することもしばしばです。
　頭をぶるぶる振る、後ろ足で耳を掻き毟る、耳が臭い、ジュクジュクの耳ダレが出ているといった症状は外耳炎の兆候です。早めの処置はもちろん、普段からの手入れで外耳炎を防ぎましょう。また、上記のような症状がすでに出てしまっている方でも、諦めるには早すぎます。外耳炎は治せる病気です。

　疑問に思いませんか?、なぜ外耳炎がここまで犬に多いのか。いや、僕ら獣医師はそれだけ多くの外耳炎に出会います。その答えは耳の解剖学的な構造に原因しています。

　外耳道は軟骨組織で構成され、耳介(耳の部分)で集音した音を鼓膜まで伝えるトンネルとして存在します。犬の耳、特に垂れ耳の犬種ではこの外耳道の通気性が非常に悪く、外耳道は体温によって高温多湿に保たれます。しかも決定的に違うのは、犬には垂直耳道と水平耳道があるということです。人間では、あえて表現するなら水平耳道しかありません。どういうことかというと、犬の外耳は『L字型』になっていて「L」の縦の部分が垂直の部分、横の部分が水平の部分です。水平になったあとの鼓膜に続き中耳があり、さらに小学校で習った「ツチ骨」「キヌタ骨」「アブミ骨」の順で内耳(三半規管や蝸牛)につながり、聴覚神経として最後に脳へと連絡します。

　この垂直、水平耳道があることで耳の通気をさらに複雑にさせ、結果、種々の細菌や酵母菌(主にマラセチア Malassezia pachydermatis)が増殖しやすくなります。ときには既に感染している犬や猫から耳ダニをうつされることも少なくありません。過剰に出た耳垢(みみあか)をエサにして耳ダニ(耳疥癬 Otodectes cyanotis )が繁殖します。耳ダニは、移動する際の機械的刺激や、アレルギーによって強い掻痒感を起こし問題となります。特に夏は細菌や酵母菌の繁殖を容易にし、外耳炎を悪化させやすくなります。

　悪化した外耳炎は、炎症反応によって滲出物(耳ダレ)を分泌し、じゅくじゅくした耳になっていきます。さらに炎症が進むと、中耳にまで炎症が波及して(中耳炎)、内耳をも刺激し(内耳は平衡感覚などを察知する)、運動失調、斜頚(首が病変側に傾く前庭障害)、眼振(目が右左に動き、ちょうど遊園地のコーヒーカップに乗ったあとのような感じ)などの神経症状を起こします。外耳道のそばには顔面神経という脳神経が走っており、炎症が酷くなると神経を刺激して顔面神経麻痺を起こすこともあります。

　ではそもそもの原因はなんでしょうか。原因は多岐にわたります。
・アレルギー性疾患(アトピーなど)に関連
・外傷性(耳を引っ掻いたりして傷がつくことで炎症がスタート)
・人為性(綿棒などの使用で耳道が傷つける。綿棒は耳垢を奥に押し込むだけ)
・異物性(シャンプーや水浴により耳道内に水が残留する。砂などの異物による反応)

　さて、『外耳炎、治します』という大胆なタイトルを付けたのには訳があります。動物病院によっては外耳炎治療にあまり時間をかけようとしません。抗生剤や抗カビ剤、ステロイド製剤などの点耳薬や、それらの合成点耳薬を落としたり、それらの薬の錠剤を内服させるに留まることが多く、しかしながらそれらは根治的な治療ではないかもしれません。

　外耳炎治療の決定打、それは”耳洗浄”です。耳洗浄は、はっきり言って面倒です。面倒というと語弊があるので言い換えますが、一回の処置に時間がかかり、それに一生懸命洗浄しなければいけません。洗浄はケースによって異なりますが、2種類の洗浄液を用います。1つ目の洗浄液で耳道内の“脂”を溶解し、2つ目は消毒液でじゃぶじゃぶ耳の中を洗います。しゃぶしゃぶではだめです。ジャブジャブです。そうすることで耳垢が出てきますし、逆に言えばそこまでしないと耳はきれいにはなりません。ここまでを丁寧に行い、外耳道をかなりのところまで綺麗にして、ここで初めて抗生剤とカビの薬を点耳します。また、耳ダニがいる場合は殺ダニ薬も点耳します。これにはイベルメクチン製剤やフィプロニルスプレーやスポットオン製剤などが用いられます。

　これでOKです。たったこれだけですが、あとは洗浄液と点耳薬を処方して、飼い主さんが家で毎日耳洗浄すれば殆どの症例は好転します。もし家で出来ない場合は定期的に通院しなければなりませんが、基本的には飼い主さんがどこまでがんばれるかに掛かっています。外耳炎は我々獣医師が治すのではなく、あなたが治すのです。

　以上、ここまで犬についてお話してきましたが、少し猫の外耳炎についてもお話しましょう。馴染みが薄いかもしれませんが、猫も外耳炎になります。猫は外耳道が短く、耳が立っている分、犬よりか頻度は低いですが、しばしば外耳炎に罹ります。猫ではダニ性の場合が多い上、外耳炎になりやすい猫種もあります。スコティッシュフォールドなどの耳が垂れているものや、アメリカンショートヘアなど脂の分泌が多い猫種では外耳炎に罹患し易い傾向にあります。
　
　しかし犬と違い、犬と同じような耳洗浄の手技では、比較的容易に鼓膜が破れてしまします。その結果、前庭障害や耳が聞こえなくなるなど、重大な事態を惹き起します。したがって、本当にgentle(=優しく)に、マッサージしながら耳洗浄を行います。

　また、子犬を飼いはじめたあなた、是非小さい時期から耳洗浄の癖をつけてあげてください。日頃からオトナシク耳洗浄のできるペットにすることで、外耳炎の予防が可能となります。意外に感じるかも知れませんが、ウレシイことに「しつけ」の「決定打」でもあります。自宅で耳洗浄ができるペットは、イコール(=)「しつけ優良犬」でもあります。耳洗浄を好きな犬はいませんが、嫌なことをすることで我慢するという「しつけ」につながるのです。

　外耳炎でお悩みの方も、幼犬を飼い始めたあなたも、外耳炎を予防しようとしてる方も、一度動物病院にきて、耳洗浄の方法をGETしてみてはいかがでしょうか。

　“外耳炎はいくら高価な点耳薬や内服薬を投与しても、それだけでは治すことができません。飼い主さんの愛情と熱意、そして「耳洗浄」が三位一体となって治せるのです”


文:小川篤志</description>
<pubDate>Fri, 15 Aug 2008 12:54:27 +0900</pubDate>
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<title>ペット豆知識 vol.6-ノミ、ダニが媒介する致死的な怖い疾患-</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/18.htm</link>
<description>ストップ・ザ・ノミ、ダニ!!

―かゆみのためじゃないっ?
　犬も歩けばダニがつく。猫には小判よりノミダニ駆除剤。みなさん、ノミやダニの“本当の怖さ”知っていますか?今回はノミやダニが媒介する恐ろしい病気についてご紹介します。
　以前フィラリア症について特集しました。フィラリアは蚊によって媒介されますが、ノミやダニについても同じと思ってください。刺されることでのかゆみを防止することが害虫予防の意義と考えられがちですが、我々獣医師が予防を薦める理由は、むしろそれより害虫によって『媒介される感染症』を予防するためであることをまずご理解ください。


―ノミ、及びダニ媒介性疾患
では、ノミやダニによって『媒介される感染症』とはどのようなものがあるのでしょう。そのいくつかをご紹介します。


・犬のバベシア症(下記参照)
・犬のヘパトゾーン症:日本ではHepatozoon canisの近縁種の感染例があります。マダニの経口摂取で感染し、通常不顕性ですが、発熱、体重減少、食欲不振、貧血、抑うつ、目鼻の分泌物、下痢、起立不能、骨膜性骨増殖が起こります。確定診断は血液中のガモントを確認します。
・日本紅斑熱:病原体はRickettsia japonicaで、西日本から中部日本に分布、マダニ類の咬傷により感染します。人間にも感染し、死亡例する場合もあります。人ではツツガムシ病との鑑別が必要です。
・ライム病(人獣共通):日本での病原体はシュルツェマダニから分離されるBorrelia gariniiやB.afzelii、ヤマトマダニから分離されるB.japonicaがあります。日本国内での犬のライム病は神経症状が主体で、髄膜炎や脳炎、顔面麻痺などが出現します。循環器症状として、心筋壊死や心内膜炎と、それに伴う房室ブロックが認められます。人では遊走性紅斑が唯一特徴的な病態ですが、犬では認められません。
・野兎病(人獣共通):病原体はFrancisella tularensisで、伝播はダニ、サシバエ、蚊などによります。慢性に経過しますが、高い致死率を示すこともあります。



・条虫:いわゆる真田虫と言われるもので犬条虫=瓜実条虫と猫条虫がノミによって媒介されます。人間にも感染し、特に赤ちゃんや小児の口の中に蚤が飛び込むことによります。ノミの幼虫が卵を含む条虫の片節を餌として捕食することで感染が発展・成立します。マンソン裂頭条虫はミジンコとカエルやヘビなどが中間宿主で、ノミは無関係です。
・猫のヘモバルトネラ症(下記参照)
・猫引っかき病(人獣共通):病原体はBartonella henselaeで猫の爪に病原体が寄生し、人を引っ掻いた際に感染します。猫は無症状ですが、人間に感染した場合、潜伏期は3〜10日で、発熱、受傷部の丘疹・水泡、一側性のリンパ節の腫脹が主な症状です。


　このなかでも、犬バベシア症とヘモバルトネラ症(猫)が非常に重要です。どちらも基本的には赤血球内に寄生する原虫で、発症すると高度な貧血を起こします。

1)犬のバベシア症
　特にバベシア症(病原体は原虫のBabesia gibsoni)は、ここ宮崎で非常に多く見られ、日々の診療では常に診断リスト(ルールアウト)の一つとして頭に入れて置かなくてはならない疾患です。主にフタトゲチマダニが媒介し、他にツリガネチマダニ、 ヤマトマダニ、クリイロコイタマダニがあり、感染の成立にはマダニの吸血を2日以上受ける必要があります。僕がノミダニ駆除について飼い主さんに説明するときは、必ずこのバベシア症の話をするようにしています。なぜなら、駆除なしでは非常に感染のリスクが高く、また致死的な病態を示すためです。
　バベシア原虫は、赤血球のなかで分裂増殖することで物理的に赤血球を破壊したり、白血球がバベシアに感染した赤血球を直接攻撃し、破壊することで貧血が起ります。しかし、実際には、アレルギー的な機序で過剰に免疫反応(正常な赤血球までも破壊させてしまう)を起こすことが問題となり、且つ、重度の血小板減少もおき、非常に「オオゴト」です。他にも、脾腫(脾臓における赤血球と血小板のうっ滞に因る)、血尿、発熱などの症状が見られます。
　診断は、ダニ咬傷の有無、貧血所見、血小板の減少や脾臓摘出手術の往歴(脾臓は免疫=抵抗力=感染防御の親玉的臓器で、脾臓摘出後は感染のリスクが非常に高まるため)などがありますが、決定的なのは顕微鏡下での赤血球内に寄生するバベシア原虫の確認です。特徴的なのは、赤血球内に“双梨状”や“リングフォーム”と表現される虫体が確認できることです。
　治療には、抗バベシア薬である『ガナゼック』という薬が有効ですが、小脳出血による痙攣など非常に副作用が強いのが問題です。かつ「ガナゼック」は犬には認可されていない薬ですが、他に有効な薬がないため使用せざるを得ません。一部の抗菌剤にも効果がありますが、臨床的な効果は確立されていません。
　もともとは家畜の伝染病として恐れられた病気で、現在でも牛(特に放牧牛)の死因にはバベシア(正確には、牛ではピロプラズマ症という)によるものも多いです。「ガナゼック」は牛のピロプラズマ症のための薬なのです。

2)猫のヘモバルトネラ症(Haemobartonellosis)
　ヘモバルトネラ症は犬(病原体はH.canis)にも猫(H.felis)にもある疾患ですが、病原体が違うため、犬と猫の間では伝染しません。犬では不顕性感染(感染しても症状がない状態)であることが多く、特に猫で問題となる病気です。犬ではマダニによって感染しますが、猫ではノミ、猫同士のケンカや母子感染でも伝播し、野外の猫はかなり高率で感染していると言われています。原虫であるバベシアとは違い、赤血球の表面に寄生するマイコプラズマという生物だということが最近分かりました。こちらも貧血が問題となり重度では輸血も検討され、こちらもオオゴトです。また、猫白血病や猫エイズに感染している猫では、より重度になる場合が多く、ワクチンの重要性についても近々特集する予定です。
　治療は、主に抗生物質(テトラサイクリン系、ニューキノロン系)と貧血が進んだ場合には輸血も実施します。死に至る場合も少なくない疾患です。

　ダニやノミは犬、猫はもちろん、問題は人間にも感染する病気をもっており、例えばダニが付着した犬が家に戻ったとき、そのダニが人間を噛むことで感染するといったルートも十分考えられます。
　宮崎では、特に山の中や河川敷にマダニが多く、ダニやノミが非常に“付きやすい”場所であると思ってください。犬も歩けばダニが付き、猫に小判はあげなくてもノミは付きます。じゃあどうしたらこれらの害虫から、そしてそれらが媒介する病気から可愛いペット達を守れるのでしょうか。


――試す価値ありノミダニ駆除剤
　できる事なら、ダニ、ノミの居る場所や居そうな処にペットを近づけない・連れて行かないことです。しかし、散歩などどうしても屋外に出たり、病院やペット・サロンに連れて行かざるを得ないのも事実です。この15年でノミ・ダニの予防が浸透した結果、バベシア症やノミアレルギーの症例は5分の1〜10分の1まで減少していると思われます。ノミ・ダニ駆除剤はあくまでもノミ・ダニを殺す薬で、病原体を殺滅するものではありませんが、病気感染の防御に多大の貢献をしていることに間違いはありません。
　量販店やスーパーでよく「ノミダニ駆除剤」とか「ノミ取り首輪」とかを目にします。しかし、はっきり言って効果はとても弱いです。むしろ首輪を咬んで中毒を起こしたりすることもあり、実際に先月、当救急病院にもペルメトリン中毒(ノミ取り首輪の成分)を起こした猫が瀕死の状態で連れてこられました。数日後には回復しましたが、きっともう二度とノミ取り首輪を買おうとは思わないでしょう。
　そこで、我々動物病院では『フロントライン』やその他のスポットオン剤を処方しています。これらの類似品は量販店にもありますが、成分が違ったり、成分は同じでも量や濃度が半分であったりします。「フロントライン」をはじめ病院扱いで正規の駆除剤を月に一回、背中に垂らすだけでほぼ予防できます。まさに「ストップ・ザ・ノミ、ダニ」。未予防の方は、一度動物病院に相談されてはいかがでしょうか。

――最後に・・・
　さて、ストップ・ザ・ノミダニと題してお話してきましたが、ノミやダニの怖さはわかっていただけたでしょうか。ほかにも猫のアレルギーの多くはノミアレルギー(アレルゲンはノミの唾液)に関連してるといわれていますし、ダニもアレルギーや大量寄生では貧血をおこします。ちなみに僕はシェルティーに寄生した100匹以上のマダニを取ったこともあります。(ダニは頑丈な口器をがっちり皮ふに刺して吸血しますので、決して安易に取らないように!)
　もちろん犬猫に寄生することも問題ですが、人間にも多くの病気を媒介します。代表的なのは日本紅斑熱で、これはダニによって媒介されます。先日ニュースでこれに感染した70代の女性が亡くなりました。それに、本来ノミが保有する病原体が猫の爪を介して感染するのが猫引っかき病(Bartonella henselaeによる)です。小学校の頃、お世辞にも真面目とは言い難い性格だったある友達が、体育の授業を「猫ひっかき病」で欠席しました。しかし性格が災いしたのか、体育教師にはまったく信じてもらえず、数日後彼は「本当なんです。猫ひっかき病にかかってたんです!」と泣きながら訴えていたのを影からじっと観察したのを覚えています。ふざけた名前なので信用のない人が感染すると社会では通用しなそうですが、結構怖い病気なんですよ。

　ノミやダニは蚊と違い一年を通してあなたとあなたのペットを狙っています。くれぐれも予防は定期的に。

文:小川篤志


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<pubDate>Fri, 08 Aug 2008 23:55:12 +0900</pubDate>
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<title>★熱中症についての追記★</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/20.htm</link>
<description>愛犬の熱中症、ご用心　暑さに弱い短頭種・高齢犬

Yahooのトップニュースで熱中症について特集されました。
何度も言うようですが、本当に熱中症が多く、毎日のように救急病院に連れてこられます。とくに多いのが、屋外で飼われている大型犬、パグ、ブルドッグなどの短頭種です。
まだまだ暑い日が続いていますので、引き続き注意をしてください。

</description>
<pubDate>Tue, 05 Aug 2008 21:57:40 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>ペット豆知識 vol.5 -犬の僧帽弁不全症(MR)-</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/17.htm</link>
<description>MRってなに???

　まだまだ暑いですね。前に特集した熱中症ですが、ここ最近救急病院に連れてこられる犬が急増しています。何度もいいますが、本当に熱中症にはご注意ください。
　さて、こんなに暑いと仕事もはかどりませんね。仕事、試験勉強、家事にも適度な休憩が必要です。しかし、どんなときでも休憩してはいけないものがあります。『休憩』すなわちそれは『死』を意味します。絶対に休憩してはいけないもの。それは心臓です。今回は犬、特に小型犬に多いMRについて特集します。

―MRってどんな病気?―
　MRとは僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Regurgitation)といい、簡単に言えば心臓の弁(一定方向に血液を流れさせるための関所)が正常に閉まりきらなくなり、血液が逆流して様々な病態を示すようになります。
　下の図をご覧ください。心臓には4つの部屋があります。大きく分けて右と左で完全に隔たれていて、さらにそれぞれ心房、心室に分かれます。心房と心室には弁があり、通常、心房から心室へ送る血液が、その逆方向へ逆流するのを防いでいます。
　全身から帰ってきた血液(静脈血)は右心房へはいり、次いで右心室に充満します。ここから一気に吐き出された血液は肺動脈を通って、肺を通過していきます(ちなみにフィラリアが寄生するのはこの肺動脈です)。肺で酸素交換をして真っ赤でキレイな血液(動脈血)になり、また心臓へと戻ってきます。もどってきて最初に入るのが左心房です。血液は左心房から左心室へ充満し、高い圧力で大動脈に送られ、そしてそれは全身へと回っていきます。
　重要なのは、最後の2行です。もう一度いいます。左心房から左心室へと運ばれ、充満した血液は非常に高い圧力とともに全身を循環していきます。さて、僧帽弁閉鎖不全症と書きましたが、これはその名のとおり、『僧帽弁』というところが『閉鎖』することを『不全』してしまう病気です。そしてその『僧帽弁』とは左心房と左心室を分ける弁の名前であり、つまり、MRとは左心房→左心室の正常な流れが『閉鎖不全』を起こすことで、左心室→左心房へと血液が逆流してしまう病気なのです。
　閉鎖不全をおこすには、いくつか原因があります。全体の6割は弁の粘液変性という病態が原因で、これは弁とそれをを引っ張り支持している腱索が進展し、まるで伸びきったゴムのようになることで、弁が閉まりきらなくなります。そのほか、細菌性心内膜炎や拡張型心筋症による左室拡大によっても併発します。
　そもそも犬の心臓病にはいくつか代表的なものがあります。フィラリア症、先天性心奇形(動脈管開存症、心室中隔欠損、大動脈弁狭窄など)、拡張型心筋症、気管支拡張症や腎不全などに続発して(二次的)起こる心肥大、そして僧帽弁閉鎖不全(MR)はそれらの中でも非常に頻発する疾患です。ヒトにも犬のMRと同じ病態(僧帽弁の粘液変性)で発症する僧帽弁逸脱症候群という病名があります。原因は不明です。

-MRのサインを見逃すな!-
　マルチーズ、シーズー、キャバリア、トイ・プードル、ダックス、(柴犬も多い)などの犬種を飼われている方は、MRに要注意です。MRは後天性疾患で、かつ進行性です。つまり、高齢になればそれだけMRのリスクは高まりしかも進行性にどんどん悪化していく病気です。となれば、早期発見が予後のカギとなります。
?コンコンといった空咳(乾咳)
?運動を嫌がる
?呼吸状態の悪化
?心雑音
　まず、われわれが気づく最初のサインは、聴診における逆流音です。普通心臓は、「ドッド・・・ドッド・・・」といった歯切れのいいリズムを繰り返しますが、逆流音がある場合、収縮時に合わせて「ザーッ、・・・ザーッ・・・」といった音が聞こえます。この逆流音を6段階で評価し、6が最も重度な心雑音とされます。(下図参照)最初に挙げたような犬種は少なくとも半年に一回は病院での健康診断を受けるべきだと思います。聴診とエコー(超音波)検査でバッチリです。
　また、咳もMRの重要なサインです。左心房の肥大で左側の気管支が圧迫され、咳が出始めますが、進行すると、肺水腫を起こし致死的な状態に進行します。もういちど心臓の図をみてください。左心室から左心房への逆流が進むと、わかりやすくいえば、事故渋滞をおこします。うまく前方に血液を送れなくなるため、左心房がパンパンになり、後ろからやってくる血液が渋滞してきます。これはうっ血性心不全という病態で、それはやがて肺の方まで渋滞を起こし行き場のなくなった渋滞血液は外に飛び出します。それが肺水腫です。肺水腫は非常に緊急性の高い疾患のため、咳が続きゼエゼエ言いはじめたらすぐに病院に連れて行きましょう。

-不治の病、MR-
　残念ながら、MRを完全に治すことは現代の獣医学では不可能です。しかし暗い話ばかりではありません。”進行を遅らせること”ができます。心不全のもっとも重要なことは血圧が上昇するということです。心不全により循環血液量が低下すると体がそれを感知し、血圧をあげて正常な循環を保とうとします。さらに飲水量を増やして、腎臓でのナトリウム(塩分)の保持と抗利尿そして血管収縮が起き、悪い心臓はどんどん悪くなっていきます。これは心臓の代償機構の悪循環で、簡単に言えば、目先のトラブルにしか目がいかなくて、気づいたら巨大なトラブルになっていたというようなものです。
　治療は、心機能の低下から起こった抹消血管の収縮を血管拡張剤=血圧降下剤(ACE阻害剤)の投与で緩和します。分かりやすく言うと、指でつまんだホースの先を普通にして、血圧を下げ、末梢循環を回復させようとします。そうすることで左心室から左心房に逆流する血液の行き場を大動脈(全身)の方に向かわせます。そして冠動脈や肺血管拡張剤(硝酸イソソルビド)、気管支拡張剤(テオフィリン)を併用していき、さらに進んだ症例では利尿薬やニトログリセリンの投与も考慮します。さらに心臓の動きを活発化させるため、強心剤(ジギタリスなど)の投与も始めます。最近では、『ベトメディン』(ピモペンダン)という新薬が開発され、多くの犬のMRに効果を示しています。ただ、非常に有効である場合がある反面、相性が悪いと余計症状を悪化させる場合もあるので、慎重な投与が必要です。ともあれ、一度薬を飲ませ始めてからストップすると、一気に症状が悪化することがあるので、薬を飲ませるなら一生飲ませ続けていくくらいの覚悟が飼い主さんには必要です。
　しかし、なによりも大事なのは、日々飼い主さんが出来ることです。早期からの食事療法(減塩食)、ダイエット、運動制限などは薬よりも大事なことかもしれません。

-最後に-
　ながくなってしまいましたが、最後にポイントをまとめておきます。
1)咳、呼吸困難、運動を嫌うなどの症状はMRのサイン
2)マルチーズ、ポメラニアン、キャバリアはMRの宝庫
3)早期からの薬剤投与と、食事療法がカギ(血管拡張剤には弁の粘液変性や心筋細胞の肥大に対する抑制効果があると言われています)

　心臓は一日に十何万回(心拍数が100回/分の場合、1日の拍動数は14万4千回)も拍動するインソムニア(insomnia)な臓器です。心臓が休憩するときは死ぬときです。投薬、食事、運動制限、やれることはしっかりやってまだまだ心臓にはがんばってもらいましょう。


文:小川篤志

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<pubDate>Thu, 31 Jul 2008 23:20:10 +0900</pubDate>
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<title>ペット豆知識 vol.4-意外と身近な有毒物質-</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/16.htm</link>
<description>食べてイイものワルイもの

　夏バテしていませんか?暑い時期には食が細くなりますね。僕は季節に関係なくいつもお腹ぺこぺこです。かわいいペットたちも同じです。つぶらな瞳で見つめられると、ついつい食べかけのハンバーグのかけらをあげちゃいたくなりますよね。
しかし、私たちが普通に食べているものの中で、あるいは日常生活のありふれたものの中にも、ペットには有害になるものがあります。たまねぎ、チョコ、コーヒー、お茶の葉、ナッツなどはもう常識ですね。あなたはいくつご存知ですか?


―身近な食べ物―
・・・タマネギ、チョコレート、コーヒー、マカデミアンナッツ、キシリトールガム、アスピリンなど

?タマネギ
タマネギは、タマネギ中毒の原因物質です。これは、溶血性貧血という病態を示します。タマネギやその他のネギ類(ねぎ、にんにく、ニラなど)に含まれる酸化剤(プロピル・ジスルフィド)によって赤血球が破壊されます。コーヒー色の血尿を呈するのが特徴で、2次的に肝障害が見られることがあります。夕方、薄暗い頃にBBQをしている最中にうっかりタマネギを落としていたのに気づかず、犬が拾って食べてしまっただとか、タマネギが含まれる料理、たとえばハンバーグやカレー、味噌汁、焼そばなどにも気をつけてください。決して珍しい病気では有りません。当院の救急病院にも、ハンバーグの料理中にタマネギのかけらを落としてしまい、それを食べてしまった子犬が連れてこられました。幸い、少量だったこともあり大事には至りませんでしたが。個体差や犬種差(特に柴や秋田犬は要注意!!)により異なるので、少量だからといって安心はしないでください。

?ココア
チョコレートやコーヒー、ココアにはキサンチン誘導体とよばれる物質(テオブロミンやカフェイン)が含まれていて、これは中枢神経の興奮作用があります。嘔吐や下痢の消化器症状も起こります。これもペットにとって危険なもののひとつです。

イヌ :  40 g/?(例:5?の犬では、200gのチョコを摂取すると死亡)
ネコ : 100 g/?(例:4?の猫では、400gのチョコを摂取すると死亡)

?マカデミアンナッツ
ナッツ類には、アスペルギルス属のカビが繁殖していることがあり、人間には問題とならない量であっても、これもペットには危険です。(ちなみにアスペルギルスの産生するアフラトキシンという毒素は、自然界に存在する最強の発ガン物質と言われています。ついつい酒のお伴に柿の種を食べ過ぎる傾向のある僕はやばいかも・・・?)

?キシリトールガム
キシリトールにも毒性があります。キシリトールは甘味料ですが、糖よりもインスリン(血糖値を下げるホルモン)を強く分泌させ、低血糖を起こします。甘いものを食べたのに低血糖になるわけです。数年前アメリカで、キシリトールを食べた犬が死亡したというテレビニュースを記憶している方もおられると思います。最近ではガムに含まれていることが多いので、これにも気をつけてください。

?アスピリン
解熱剤も犬猫には重篤な副作用を与えます。アスピリン中毒が見られ、消化管、肝臓、腎臓へ悪影響を及ぼします。人間と他の動物では代謝経路が違う場合があります。いわずもがな、人間用の薬を安易にペットに服用させるのは絶対にやめましょう



―身近な観葉植物―
　意外に知られていないのは観葉植物です。伴侶動物(ペット)の中毒症のうちで植物が占める割合は10〜15パーセントと言われています。その中で犬が70%、猫が25%、その他が5%です。誘引としては室内飼いで閉じ込め状態のストレス、退屈や倦怠、若齢動物のいたずらが挙げられています。飼い主が不注意にも動物に与えることもあります。今回は特に身近にある毒性植物について行(紙面)を割くことにします。

　良く見られる植物毒の症状は大きく4つに分けられます。主に?消化器系に影響を及ぼすもの、?循環器系に影響するもの、?神経系に作用する、?接触性の障害の4つです。

?消化器障害
　主に消化器系に毒性を示すもののいくつかを挙げてみます。
　サトイモ科の植物の葉や根茎には、シュウ酸塩が含まれています。この茎を口にいれると、激しい痛みや灼熱感、腫れが起り、さらには呼吸困難で死亡することもある怖い植物です。他にも、眼への激烈な痛みや腫れ、腎障害や神経症状が見られます。サトイモ科には、ウラシマソウ、エレファントイヤー、ザゼンソウ、マツムシ草、水芭蕉などがあります。ちなみに、サトイモは茎を口にすると数日間痛みで口がきけなくなるため、Dumbcane(無口な茎)と呼ばれます。シュウ酸塩は他にも、ユリ、ヒヤシンス、ツタ類などに含まれています。
　この他消化器系に影響するものとしては、クリスマスには欠かせない柊とポインセチアです。これらの毒素については解明されていない点も残されていますが、イリシン(ilicin)とサポニン(saponin)が嘔吐や下痢などといった消化器症状を起こします。サポニンは、ヤツデや桔梗の根にも含まれます。
　白百合(テッポウユリ)の原因毒素は不明ですが、特に猫で腎毒性を示します.2〜4日で嘔吐・下痢などの尿毒症症状を呈します。摂取が疑われたら、病院へ直行です。

　以下はそのほかの消化器障害を起こす植物です。アマリリス、黄水仙、チューリップ、アヤメ属(アヤメ、イチハツ、ハナショーブ)など(以上のものの原因毒素は不明)、トマト、ジャガイモ、ナス、ほおずきなど(以上のものの原因毒素はソラニン、ベラドンナ、ソラノカプシン)。これらは消化器症状の他、沈鬱状態や不整脈も見られます。トウゴマの毒素はリシンで、トウアズキのアブリンと同様に腹痛・嘔吐・下痢・癲癇・脳浮腫を認めます。
　植物ではないですが、キノコ類にも消化器症状を呈するものが多く、ハラタケ、イッポンシメジ、タマゴテングダケ、コレラダケはその一部です。原因毒素はアマ二チン、オレラニン、モノメチルヒドラジンです。はじめは消化器症状が見られ、その後黄疸や昏睡を呈し肝不全と腎不全で死に至ります。人では血液透析や肝移植の適応となります。


?循環器系に影響を与える植物
　強心配糖体といわれる心臓への薬理学的作用があるものは、夾竹桃(キョウチクトウ)、ジギタリス、スズラン(毒素はコンバラトキシン、コンバラリン、コンバラマリン)、チューリップ、スミレ、彼岸花などがあります。ジギタリスはその強い心臓賦活作用により、心臓薬としても利用されています。キョウチクトウは少量でも致死的ですが、非常に苦いため、死亡例は少なく、むしろ樹液への接触による皮膚炎や発疹が問題となります。ツツジ(レンゲツツジなど)やネジキ、アセビにも循環器障害を起こすグラヤノトキシン(アンドロメドトキシン)が含まれ、重篤な中毒症状を起こします。症状は嘔吐・腹痛が数時間続いた後、顕著な除脈・心室性不整脈・不全収縮・高カリウム血症など重篤な状態が生じ、死に至ることも稀ではありません。一時的な心臓ペースメーカーの装着も必要です。ちなみに獣医師国家試験の勉強中、どうしてもレンゲツツジ、ネジキ、アセビ、グラヤノトキシンの並びが覚えられず、私はこう覚えました。
「レンゲねじって汗びっしょり、蔵屋のトキさん」


?脳神経系に影響する植物毒
　脳神経系に作用する植物を摂取すると、中枢神経麻痺や興奮、運動失調、幻覚などが見られます。アボカドの種、アマリリス、杏の未熟な種子、イチイの葉(毒素はタキシン)、水仙、タバコ、チョウセンアサガオ、ドクゼリ、トリカブト、パンジー、ホオズキの未熟な実、麻、水芭蕉などがあります。そのほか、キノコ類でも牛の糞に自生するマジックマッシュルームと呼ばれるベニテングダケなどがあります。これらは幻覚や錯乱状態となることがあります。
　タバコ毒素であるニコチンは即効性に自律神経節を興奮させ、その後抑制します。重篤な例では呼吸筋の麻痺による窒息死がみられます。人工呼吸や胃洗浄、開腹手術をしてタバコを胃・腸管から除去しなければなりません。飼い主の不注意による事故が多く、スモーカーの方は気をつけてください。
　意外なのはアボカドの種ですね。包丁をいれたときに中心にあたるあの大きな種です。ウサギやモルモット、オウムやインコといったペットが摂取すると、痙攣や呼吸困難をおこすことがあります。個人的にはこれらの小さな動物があの硬くて大きなアボカドの種を食べられるかは疑問符ですが、アボカド好きで小鳥を飼っている方は要注意です。
　トリカブトはサスペンスドラマなどによく登場する有名な植物なので、なかなか部屋の中で大切に育てているちょっとアブナイ方はいらっしゃらないとは思いますが、林の中では、ヨモギなどと混生していることがあるため、誤食することがあるようです。アコニチンという毒素で、これも国家試験の時、「あ、こんにちは。トリカブトいかがですかー」と叫びながら歩き回る友人を見て覚えました。
　また、上記には書きませんでしたが、サリンジャーの『The Catcher In The Rye(ライ麦畑でつかまえて)』で有名なライ麦には麦角菌が繁殖していることがあり、麻薬指定であるLSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)が含まれ、ひどい幻覚や嘔吐、下痢そして死をもたらすことがあります。中世のヨーロッパではペストと並んで恐れられた黒死病の原因です。


?接触性障害
接触性障害とは、人や動物がその植物に触れることで皮膚炎や粘膜の炎症をおこすことで、これらを起こす可能性のあるものは、ウルシ、ゴムの木の樹液、胡桃(オニグルミ)、ニリンソウ、マツヤニなどです。


　このほかにも、本当にたくさんの有害植物があります。梅も生のまま摂取すると、胃内で青酸カリとなります。宮崎で多いのはソテツですが、これも体内で猛毒のホルムアルデヒド(ホルマリン)に代謝され、死亡することがあります。戦時中、食べるものに困った教師が生徒にソテツの実を食べさせ中毒をおこしたこともあるそうです。たばる院長は、「ソテツ食べたらソテツもないことになるで!」とソテツもなく寒いギャグを飛ばしていました。


　今回調べてみて分かったことは、私達の近くには本当に沢山の危険なものが簡単に潜んでいるということです。かつ、病院に連れて来られるペットには意外に植物中毒が多いのかもしれないということでした。中毒の場合、治療は対症療法に絞られますが、ついつい見逃されがちな原因の追求、そして除去(有害なものを近くに置かないなど)にも徹底を期さなければいけないと感じました。
　今日私達が使う薬のほとんどは、元は植物から抽出されたものです。世界最古の麻酔はコカの葉といわれており、現在の局所麻酔はこれ(コカイン)を基本にしたリドカインやプロカインが使用されます。アヘン草はモルヒネとなりやがてヘロインに、麻黄(マオウ)はエフェドリン(鎮咳薬)となり覚醒剤に。薬草は薬にも毒にもなります。綺麗なものにはトゲがある。庭や室内に観葉植物がある方は注意してください。


　犬、特に何にでも興味津々の子犬は常に食べられそうなものを狙っています。ナメクジ駆除剤のときにも書きましたが、机の上に置いたりしない、片づけを徹底する、といった心がけが大事です。
　もちろん異物摂取(例えば、釣り糸や釣り針、おもり=鉛、スーパーボールのなどボール類、コイン、ボタン、鶏の骨など)についても十分気をつけてください。

　上記のもの以外にまだまだ沢山の「有毒物質」が、いやいや「誘惑物質」があなたのペットの命を狙っています。治療は胃洗浄、催吐処置、輸液、利尿剤の投与、活性炭の投与・・・・・などなど「オオゴト」です。怪しいと思ったら直にかかりつけの病院へ電話して指示を仰ぎましょう。そして病院へ車で直行です。食べてイイものワルイもの、しっかり知って、間違っても大事なペットを死に至らせることの無いように注意しましょう。


文:小川篤志

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<pubDate>Thu, 24 Jul 2008 14:51:33 +0900</pubDate>
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<title>ペット豆知識 vol.3-熱中症-</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/14.htm</link>
<description>熱中症に陽(ひ)の用心!

暑い。非常に暑い日が続いております。暑い暑いとは聞いていましたが、東京から出てきたばかりの私は宮崎の夏を少々見くびっていたようです。
Tシャツに短パンの人間だってここまで暑いのです。ふわふわの毛皮を全身に纏ったペットは、さぞかし暑いことでしょう。

第3回となる『ペット豆知識』は熱中症について特集します。


さて突然ですが、下の項目のいくつに当てはまるか数えてみてください。
?外で飼っていて、日陰が少ない場所に犬を繋いでいる
?閉め切った車の中で待たせることがある
?日中、家族が出かけている間クーラーはつけていない
?犬が好きなときに水を飲める状況にない
?普段は冷房が効いた部屋にいるのに、日中に長い時間、外に出した
?太っている
?呼吸器系の疾患がある
?心臓病があると言われたことがある
?短頭種である(パグやブルドッグなど)
?長くて暗い色のフサフサ毛並の犬

3つ以上マルがついていたら、熱中症に要注意です。

熱中症は、ご存知のとおり暑さによって惹起されます。多くの犬の平熱は38〜39℃ぐらいですが、何らかの原因(上記のような状況)で体温が上がり、41℃程度から高体温と診断できます。43℃(正確には42.7℃)以上になると、多くの臓器が障害を受け死亡することも少なくありません。
犬は、発汗によって体温を下げることができるヒトとは違い、呼吸を激しく(パンティング)することによって体温を下げる冷却メカニズムを持っています。したがって、熱中症になるには、1)冷却メカニズムが追いつかないほどの暑さ、2)暑いのに冷却メカニズムがうまく作動できない、3)水を自由に摂取でず脱水状態となる、などといった原因があります。
では、症状を見てみましょう。


・あえぎ呼吸(パンティング)　　　　 　 ・頻脈
・痙攣　　　　　　　　　　　　　　　　・呼吸困難
・よだれ　　　　　　　　　　　　　　　・高熱
・尿量の減少　　　　　　　　　　　　　・下痢や血便　など

　これといった特徴的な症状が有るわけではありませんが、とにかく発熱し、明らかに暑い場所に放置したあと、このような症状が見られた場合、すぐにホースで頭から水をかけたり、水をはった風呂などに入れて冷却してください。熱中症は、救急疾患です。すぐに動物病院に連絡しましょう。


それでは最後に、10個のチェックリストに一つずつ回答していきましょう。

?外気温と実際に動物が感じる温度は違います。たとえば、高湿度、風の有無、直射日光の当るアスファルト、リードでつながれていて動ける範囲が少ないなどの状況は、容易に熱射病のリスクを高めます。日陰をつくって、自由に水が飲めるようにしてあげてください。

?閉め切った車内は、一番危険な状況だと思ってください。たとえば昼間、外が25℃でも20分車を放置するだけで、車内は50℃以上になります。それに加え、換気が不十分で対流による冷却ができず、1時間も放置すれば死亡する可能性が多々あります。

?これも、?と同じ理由です。換気が不十分であり、かつ日差しが入りやすい部屋はビニールハウスの中と同じだと考えてください。室内飼いの方は、必ずクーラーをつけておきましょう。電気代は病院代よりも安上がりですよ。

?熱中症は飲水制限により、重篤化します。脱水があると、熱放散つまり冷却メカニズムがうまく作動せず、より熱射病を悪化させる原因になります。夏場は、いつでも犬が水を飲むことが出来る環境を整えてあげましょう。

?そこまで暑くなかったとしても熱中症が起こる場合があります。たとえば、きのうまでは涼しかったのに、今日は突然暑くなったとか、非現実的ですがアラスカで生活していた犬が今日宮崎に引っ越してきたなどです。要は、体の順応が出来ていない場合、突然の環境の変化についていけないことがあるのです。

?肥満した動物では、余分な脂肪の断熱効果により、正常な体温冷却が妨げられるため、熱中症のリスクが高くなります。ちなみに高年齢もリスクファクターとなります。若返ることは始皇帝や卑弥呼もできなかったことですが、ダイエットならいますぐ出来ますよ。

?先ほども述べたとおり、犬はパンティングによって熱を放散します。呼吸器疾患があれば、冷却メカニズムが作動できず、容易に高体温へとなっていきます。

?循環器系の病気は、心臓が血液を拍出できる量が低下していて、皮ふへの血液循環が悪くなり、体熱の放散を妨げます。

?パグやブルドックなどは短頭種と呼ばれ、遺伝的に呼吸器に問題を抱えています。パグがふがふが言うのはそのためで、理由は?と同様です。

?セントバーナードやバーニーズのような、長毛で暗い色をした被毛をもつ犬では熱中症のリスクが高いとされています。

思い当たる節がある方は、是非参考にしてみてください。


　数年前、当院に来られた飼い主さんが、車の中に犬を戻してドアを閉めると、窓越しに乗り出す仕草をした犬がロックボタンを中から押してしまったそうです。炎天下で鍵屋さんの車が来るまで車に水をかけ続けたという話がありました。しゃれではありません。本当の話だそうです。

　余談ですが、私が院長に叱られるときのひとつに『常に最悪の場合を想定して行動しろ』とよく言われます。もちろん獣医療の範囲内でのひとコマですが、人間ほど理性を持たないペットたちにはくれぐれも最悪の場合を考えてあげれば、熱中症に限らず、多くの病気を予防できるのではないかと思います。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　文:獣医師　小川篤志


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<pubDate>Sun, 13 Jul 2008 20:47:10 +0900</pubDate>
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<title>ペット豆知識 vol.2 -犬のフィラリア症-</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/13.htm</link>
<description>忘れてませんか?『フィラリア予防』

イヌを長生きさせる上で、一番大事なことはなんでしょう?
愛情?しつけ?おいしいジャーキー?それとも綺麗な洋服??いえいえ、どれも違います。
　長生きするために一番大事なこと。それはズバリ『フィラリア予防』です。
当たばる動物病院グループ院長によれば、犬は「1に給餌、2にフィラリア予防、3に愛情、4に散歩で、5にしつけ」だそうです。
事実それほどにフィラリアは怖く、そしてかかりやすい病気であるといえます。

　さて、第2回となる今回はフィラリア症つまり『犬糸状虫症』について特集します。

　まずフィラリアとは一体何者なのでしょうか。フィラリア(学名:Dirofilaria immitis)は、犬糸状虫(イヌシジョウチュウ)ともいい、その名のとおりまさに素麺のような白い体をしています(写真参考)。ところでフィラリアは寄生虫に分類されますが、ではなぜ同じ寄生虫の回虫や条虫の予防よりも、フィラリアをここまで気にかけねばならないのでしょうか。
　それは、ほかの多くの寄生虫が「腸管」に寄生するのに対し、フィラリアは「心臓」に寄生をするのです。正確には肺動脈が主な寄生部位で、肺動脈とは全身からの静脈血がまとめて戻ってくる右心室から肺へと血液を送る大きな血管のことです。つまり、ここに何十匹も、ひどいときは100匹以上ものフィラリアがいれば、重度の心不全と呼吸器症状が現れ、慢性化すると腹水が貯留し、ひどいときには喀血をしたり、非常に苦しみながら死亡します。

　これこそ、フィラリアの予防を徹底しなくてはならない大きな理由なのです。では、フィラリア症はどのような症状を惹(ひ)き起こすのでしょうか。


・発咳(せき)
・運動不耐性(散歩などの運動を嫌がり、時には突然虚脱し倒れる。ちょっと興奮するだけで舌や歯ぐきの色が蒼白くなる=チアノーゼ)
・腹水(うっ血することで、お腹に水がたまりふくれてくる)
・削痩(おなかは膨れても、肋骨がはり痩せてくる)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　etc・・・

　このようにフィラリアが引き起こす右心不全によって全身性の症状が現れてきます。これらは病期が進むほど悪化し、前述したとおり治療なしでは最終的には死亡するケースがほとんどです。寿命との関連は明白で、近年犬の寿命が大幅に伸びた一番の要因はフィラリア予防が確立されたことによると考えられています。

(マメ知識ですが、渋谷の待ち合わせ場所でお馴染みの『ハチ公』もフィラリア症によって死亡しており、東京大学の獣医病理学教室にはフィラリアが多数寄生したハチ公の心臓の標本が残されています。)

　さて、このフィラリア症が犬の寿命を縮めるほどに怖く、非常に苦しい病気だということは十分ご理解いただけたと思います。





　まず、予防には一般的に月一回だけ飲ませる錠剤やチュアブル剤の薬があります。その薬を、宮崎では4月から12月までの9ヶ月間服用させれば、ほとんど完全に予防することが出来ます。でも、あれ?1,2,3月の冬の時期には飲ませなくていいの?すでにご存知の方もいるでしょうが、このフィラリア症、実は蚊が関係しているのです。

　下図に示すとおり、フィラリアのライフサイクル(生活環)は蚊がいなければ絶対に成立しません。つまり、蚊が存在しない季節にはフィラリア予防をする必要性が低いため、1〜3月には飲ませなくても良いのです(いたとしても蚊は気温が15度以上でないと吸血行動をしません)。
ではフィラリアの一生を見てみましょう。

　フィラリアは、フィラリアに感染した犬の体内で、親虫からミクロフィラリア(以下mf)と呼ばれる子虫が次々と産まれます。多いときでは数千万匹ものmfが犬の血中を漂います。これらを蚊が吸血することで、mfは血液とともに蚊の中に入ります。そして再度吸血したときに、また新たな犬へと感染していきます。
　新たな宿主(犬)を見つけ感染に成功した子虫は、いったん皮下や筋肉内で身を潜めます。この間2〜3ヶ月(ここが、予防をする上で重要なポイント!)。その後、血管にまで到達した子虫は、目的の肺動脈で塞(せ)き止められます。そして、感染してから約6ヶ月後、とうとう成虫となったフィラリアはオスとメスで交尾をし、mfを産み始めるのです。

わかりづらかったという方のためにポイントを整理しておきましょう。
1.　親虫から、ミクロフィラリアが多数産み出される
2.　蚊の吸血行動でmfが蚊の体内に吸引され、その後の吸血行動時に新たなフィラリアが媒介される
3.　感染に成功してから2〜3ヶ月は皮下や筋肉内で過ごす
4.　感染後、約6ヶ月でmfを産みはじめる

　一般的に月一回飲ませる予防薬は、皮下や筋肉内にいる子虫を叩く薬です。つまり、一度感染したとしても、2ヶ月は皮下にいるので、一ヵ月ごとに薬を飲ませれば予防できるというシステムです。感染→駆虫→感染→駆虫を繰り返すわけです。これによって、フィラリアが定着するのを完全に予防することが出来ます。

　しかし、もしmfが血中に漂っている状態(つまり、すでに感染していて親虫が心臓に寄生している状態)でこの薬を飲ませてしまうと、殺mf作用により、大量のmfの死骸が抗原となり、全身性のアレルギーや、細動脈の塞栓重篤な副作用を起こすことがあります。
　そのため4月に予防薬を飲ませ始めるときは、必ず一度検査してから、フィラリアの感染が無いことを確認しなけれがなりません




　検査には血液中の抗原を調べるキットや、顕微鏡でミクロフィラリアを検出する方法があり、これらの両者を行うことで、より高い検出率を示すことができます。
　X線検査では、肺動脈の拡張や右心室の拡大(拡張と肥大)が主原因による特徴的な『逆D字型ハート』を呈します。エコー検査においても、肺動脈内を浮遊・移動する虫体が認められる場合が少なくありません。




根治的な治療法ではありませんが、肺動脈に寄生するフィラリアの成虫への対処法が2つあります。
1.　外科的手法
2.　内科的手法

　1の外科的手法は成虫吊り出し術」という、いわばフィラリア摘出術です。アリゲーター鉗子(写真参考)を頸静脈から挿入し、肺動脈に寄生する成虫を取り出す手術です。かなり熟練した技術が必要とされる上、X線透視下で行うため術者にもかなりの負担(放射線被爆)がかかります。全身麻酔など犬への負担が大きいことや、最近はフィラリアの感染数が少ないことから、2の内科療法を選択するケースが多いのが実際です。

　2の内科的治療法には、メラルソミン(商品名:イミトサイド)の筋肉内投与があります。これはいわゆるヒ素剤の一種であるため、犬への負担もあり重大な副作用が起こる場合がありますが、ほとんどの場合完全に駆虫することができます。年齢や心肥大の程度、合併症の有無やその程度などにより治療の是非を慎重に決定すれば、奏効する場合がほとんどです。現時点ではオススメの選択肢といえます。



終わりに・・・
長くなりましたが、なぜここまで長くする必要があるといえば、私はそれほどフィラリア予防が大切であるということを訴えたいということです。
当たばる動物病院グループでは毎年20例以上のフィラリア陽性犬が見つかります。中には、腹水がたまり、呼吸困難になり定期的に水を抜かなければならないような症例もいます。非常に苦しいはずです。
『なってから』ではなく『ならないために』出来ることがあります。今からでは遅いくらいですが、未予防の方は必ず動物病院にいくようにお願いします。


文責　小川篤志</description>
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<pubDate>Sun, 06 Jul 2008 21:47:37 +0900</pubDate>
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<title>ペット豆知識 vol.1 -メタアルデヒド中毒-</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/12.htm</link>
<description>ナメクジ駆除剤の誤食に要注意!!

　イヌとナメクジ。このふたつを見て何を思い浮かべるでしょう?サルとイヌならわかるけど、ナメクジ???と思っていませんか?一見なんの関係もないように思えるこの両者ですが、実は大いに関係があるんです。ナメクジが増えるこの梅雨の季節、犬にとってナメクジはこわ〜い存在になるかもしれませんよ。

　昔、小学校の帰り道、小枝でつつきながら実験したように『ナメクジには塩!』と考えている方もいるでしょうが、まさか庭中に塩をばら撒くわけにはいきませんね。いまは、ナメクジがお家の庭に増える時期。これには市販のナメクジ駆除剤を撒く方が多いようです。しかし、このナメクジ駆除剤には有害物質が含まれていて、イヌが摂取した場合、重篤な中毒症状を起こすことが分かっています。
これはメタアルデヒド中毒といい、様々な症状を起こし、死に至ることもある怖い中毒です。


・頻脈　　　　　　　・チアノーゼ
・流涎(ヨダレ)　　・下痢
・過呼吸　　　　　　・運動失調
・ケイレン　　　　　・脱水　etc…

　この中でも特に飼い主にも分かりやすい症状は、ケイレン(痙攣)とヨダレ(流涎)だと思います。このような症状が見られたときはすぐに動物病院に連絡することが大事です。これらの症状は摂取後3〜5時間後に現れるのが一般的ですが、もっと早く症状が出る場合もあります。

　当たばる動物病院グループでも、6月に一例メタアルデヒド中毒のイヌが、夜間救急病院に運びこまれました。来院時には激しいケイレンと過呼吸、そして大量の流涎を呈しており、明らかな中毒症状を起こしていました。速やかに全身麻酔下にて胃チューブを挿入し胃洗浄を行うと同時に、抗ケイレン薬でケイレンを鎮め、点滴留置と利尿剤で体液を入れ替える治療を行いました。この結果、3日後には無事回復することが出来ました。
　
　この種の中毒には、まず胃内の残留物質の除去を図ることが第一選択です。嘔吐する場合も有りますが、発作が見られる時には無理に吐かせるのは禁忌です。もし体内に入ってしまったなら、それ以上の体への吸収を抑えるために胃洗浄を行います。この症例においても、胃洗浄により、胃内に残ったナメクジ駆除薬の粒を大量に排泄させることに成功しました。　

　メタアルデヒド中毒の治療法には、このほかに活性炭の内服で毒物を吸着させ吸収を抑える方法や、メトカルバモルという薬で震えと発作を抑える方法などがあり、症状と程度にあわせてこれらの治療を行います。



さて、難しい話が続きましたが、結局このようなことにならないためには、

1.駆除剤を撒いた庭にイヌ出さない。
2.不用意に机の上に置いたり、引き出しにしまったりしておかず、イヌの手が届かない場所にしまう。
3.食べるのを見かけた、または荒らされた跡があるときはすぐに動物病院に電話をかける。

以上のことが大切です。

　なんだか結局のところ塩で退治するのが一番良いように思えてきましたね。。。

　梅雨もたけなわです。お宅にイヌとナメクジのコンビがいるご家庭は十分注意してお過ごしください。そしてそのほか中毒を起こす除草剤や農薬の管理にも十分気をつけてくださいね。

次回はこれからの季節の主役、フィラリア症についての特集です。
お楽しみに。


文:小川篤志

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<pubDate>Fri, 27 Jun 2008 17:57:24 +0900</pubDate>
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<title>高・老齢動物の「頭のとっぺんから爪の先」までの健康診断。</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/11.htm</link>
<description>　　これはある機関が発行しているパンフレットの取材のために予め考えた原稿です。担当者が困惑しないためと、意向が確実に伝わるために書いたものですが、皆様も参考にして頂ければ幸甚です。

 　 [動物の寿命]　獣医療も日進月歩で進化しています。従来、治療では難治性であった病気が、新たな療法の開発で完治したり、寿命を大幅に延長できるようになりました。現在、小型犬やネコでは12歳前後、中型犬では10歳前後、大型犬では8歳前後からが高齢犬と考えられています。15歳を超えても「老いどれ」どころか「ぴんぴん」しているペットも珍しく有りません。
  
  　[頭部の病気]　高齢の動物では、白内障、色素性角膜炎、乾性角・結膜炎(ドライアイ)、シーズーなどの短頭種では角膜損傷などの眼疾患が多発します。歯石、歯槽膿漏、外耳炎は「御定連」、眼瞼・鼻腔内・口腔内腫瘍も「一見様」で有りません。

 　 [胸部の病気]　マルチーズやシーズーなどの小型犬、キャバリア、柴犬、ビーグルなどでは数頭に1頭の割合で僧帽弁閉鎖不全症という心臓弁膜症が多発します。ゴールデンでは心臓腫瘍が散見されます。ネコでは心筋症が見られます。発咳や呼吸困難、運動不耐性などの症状が見られ、聴診や超音波検査で比較的容易に診断できます。気管虚脱や慢性気管支炎も侮れません。

　　[腹部の病気]　何といっても腎不全が「親分」です。年に1〜2回の健康診断で早期発見が可能です。人間と違い「透析療法」が不可能なため、早期に発見して「食餌療法」や「在宅点滴」によりかなりの寿命延長とQOL(Quality of life=生活の質の向上)の維持が期待できます。未避妊犬の子宮蓄膿症も数頭に1頭の高率で罹患します。来院が遅れると腹膜炎で死亡する恐ろしい病気です。最近では「おやつ」が原因と思われるような「肝不全」が目立ちます。「食の安全」は人間と同じように考えてあげましょう。その他、膀胱結石、腎臓結石、胆嚢炎なども侮れません。最近、最も気がかりなものが「腹腔内腫瘍」でその多くが悪性であり、動物病院でも最も「手強い代物」です。動物は病態がかなり進行しないと症状を表さないため、どうしても発見・診断が後手に回り、患畜の多くが「手遅れの転帰」をとります。超音波検査よりもお金の要らない昔ながらの「腹部触診」が威力を発揮します。

　　[脊髄・骨の病気]　椎間板ヘルニアはミニチュア・ダックスフントの「専売特許」です。程度によりますが手術をしなくても早期の内科療法やリハビリによりそれらの多くが改善します。その他前十字靭帯断裂や変形性骨・関節疾患、骨・関節炎、変形性脊椎症、椎体・椎間板炎など人間と同様な病気が多発します。これも触診やレントゲン撮影で比較的容易に診断可能です。

　　[皮膚・体表の病気]　高・老齢の動物では腫瘍が多発します。乳腺腫瘍やリンパ腫を含むイヌ、ネコの体表の腫瘍は腫瘍全体の7、8割に達します。乳頭腫(イボ=疣)や脂肪腫などの良性の腫瘍もありますが、悪性リンパ腫や肥満細胞腫などの悪性腫瘍も「常連物」です。一般にネコの腫瘍はイヌに比較して悪性の確率が高いのが特徴です。「しこり=腫瘤」を発見したら直に病院に行き、注射針の細胞吸引による「細胞診」を受け、手術が必要か否かを判断してもらわなければなりません。ここでも人間と同様「早期発見・早期外科的切除」が基本です。

　　[おわりに]　人間の病院では事あるごとに直に内視鏡やCT、MRI、PETなど最新の機器を使って診断をします。しかしながら、残念なことに、診断機器の進歩の方が治療技術よりも先行しているのも事実であります。獣医療では諸々の理由で高価な機器の導入が不可能であり、仮に可能であっても検査のために長時間の全身麻酔が必要です。が、幸いにもイヌ、ネコの腫瘍はその多くが体表や口腔内などに発生し、触知や眼で見て分ります。あくまでも私見ですが、ペットの健康診断は「問診」や「聴診」、「視診」、「触診」、「血液検査」、「超音波検査」、「レントゲン撮影」、それに「第六感」でかなりの部分カバーできます。ワクチン接種やフィラリア予防時でも構いませんので、年に1〜2回の健康診断を受けさせてあげましょう。


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<pubDate>Tue, 05 Feb 2008 20:06:01 +0900</pubDate>
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<title>初診時に必要なチェックと説明事項。</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/10.htm</link>
<description>　　仔イヌ、仔ネコを飼うようになったら、最初の1週間前後は家族や家に慣れて貰う事が大切です。下痢や嘔吐、発咳、食欲不振、低血糖による痙攣発作など特に問題が無ければ、病院に行くことは控えるべきです。病院では、検査や処置、予防接種などで相当のストレスに曝されます。来院というストレスにより、潜在していた咳や下痢などの病原体が頭をもたげ、逆に病気を顕在化(発症)させ得るからです。

　　特に、飛行機で県外より購入した動物に関しては、購入後のトラブルを極力避けるため、ワクチン接種済や消化管内寄生虫の駆除の確認を確実に行うことが必須です。

　　英国では生後3ヶ月以内でのイヌ、ネコの販売が法的に禁止されています。これは動物のしつけ(動物の親が仔に行うしつけ)の観点と、病気の問題を考えてのことです。動物は生後満3ヶ月が経たないと肝臓でのグリコーゲンの蓄積ができない為、種々の原因で食餌が摂取不可能な場合、簡単に低血糖に陥り、死に至るケースも少なくありません。さらに重大なことは、幼犬が何らかの病原体に暴露された場合、その免疫力(抵抗力)の未熟性から、呆気なく死亡することも多々有ります。要はペットを購入する場合、可能な限り3ヶ月齢以上で、ワクチン接種・駆虫済みの動物であることを確認しましょう。県外より購入する場合には獣医師の健康診断書が有れば安心できるでしょう。

  　仔イヌ、仔ネコが家に来て1週間が過ぎたら、初めての来院となります。以下に「たばる動物病院グループ」で実施しているチェック項目と説明事項について示します。　　　

　　?体重・体温の測定、聴診、触診、皮膚の状態、歯並び、外耳道など全身状態のチェック:心雑音が聴取されると重大事であり、心奇形の有無を精査しなくてはなりません。外部寄生虫である蚤や皮膚疥癬、特に耳疥癬は少なくありません。咬合不整や乳歯遺残もごく普通に見られます。

　　?水頭症のチェック:パグ・チワワ・ヨークシャーテリア・シーズー・ポメラニアンなどの短頭種では、超音波検査による脳室の大きさのチェックが欠かせません。

　　?糞便検査:回虫・鞭虫・鉤虫などの消化管内寄生虫、コクシジウム・ジアルジア・トリコモナスの原虫、カンピロバクター・ウエルチなど悪玉菌の病原体を顕微鏡で調べます。ペットショップを介した仔イヌの殆どは、これらのうち一つ以上の病原菌を保有しています。これらの病原体はワクチン接種により急激に増殖することが少なく有りません。
　　
　　?一般血液検査:当院ではワクチン接種の前には全頭に無料での一般血液検査を実施しています。貧血・白血球の増減・血小板の減少が存在した場合、ワクチン接種を見合わせることもあります。

　　?家での動物のケア:家で最低限すべきことについて指導しています。爪切り・肛門嚢絞り・耳洗浄などの方法を丁寧に教えます。

　　?しつけ、給餌、散歩について:マズルコントロール・マウンティングなどイヌ本来の本能を利用したしつけ法などを教示します。無駄吠えや分離不安症、権勢症候群などの予防・防止策についても説明します。肥満の度合、フードの種類や給餌の方法についても分かり易く説明します。ゴールデンやラブラドールなどの大型犬種では、股関節形成不全症予防のため、運動制限や給餌の制限などが必要です。その他、ダックスフントの椎間板ヘルニアなど、犬種によって特異性の疾患があります。これらの発症予防に関しても詳しく説明致します。猫白血病や猫エイズ、交通事故死、咬傷防御のための「ネコの外出は禁物」の理由も述べます。

　　?フィラリア予防、ワクチン接種、ノミ・ダニの駆除について:イヌを飼う上での最も重要で大切なことはフィラリア寄生の予防です。実物の虫体を見せてフィラリア症の恐ろしさを示します。ダニは俗称「ピロ」という貧血で死に至らしめる病原体を媒介します。ノミは「猫引っ掻き病」を惹き起こす病原菌を保有しています。ワクチンに含まれているレプトスピラ症はヒトにも伝染し、「宮崎の風土病」とも言っていい病気です。これらについても懇切・丁寧に教示します。
　
　　初診時、特に外耳炎や皮膚病などの病気をもっているペットの場合には、「説明」に約1時間を要することも少なく有りません。余裕をもって来院いただければ幸甚です。また、「しつけ」や「病気」の説明が多々ある為、家族揃っての来院が望ましいと思われます。

　　30年前のペットの寿命は5〜6歳、長生きでも7〜8歳でした。今や15年以上生きるペットもごく普通に見られます。若齢でしかも予防もしくは防御できる病気でペットを失うことは、本当に忍びない事です。何事も「最初が肝心」です。皆様の御来院を心よりお待ち申し上げます。


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<pubDate>Wed, 05 Dec 2007 19:31:48 +0900</pubDate>
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<title>イヌの門脈シャント(短絡症)の手術。</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/9.htm</link>
<description>　　イヌの先天的奇形には口蓋裂や水頭症、後頭骨形成不全、2分脊椎症(Hemi-vertebra)、小眼球症、心室中隔欠損や心房中隔欠損、大動脈弁もしくは肺動脈弁狭窄症など心臓奇形、異所性尿管、片腎や単一の卵巣・子宮角、半陰陽・・・などなど・・・ヒトと同様に多種で程度も多様である。

　　その中で、この15年ほど前から注目されるようになったのが、表題の門脈シャントがある。門脈シャントは、正確には先天性門脈-大静脈短絡症(Porto-systemic shunt=一般的な診断名。Porto-systemic vascular anomalies=実際の短絡は門脈と後大静脈だけではないので、本来は血管の先天異常の方が正確との意見有り。)という。当たばる動物病院においても、本症例を診断し、治療を実施しているので、その概要を示したい。

　　肝外の短絡症はミニチュア種やトイ種に多く、多発犬種としてはミニチュア・シュナウザーやヨークシャー・テリア、ペキニーズなどである。(洋・成書による)。

　　一方、肝内の短絡症は大型犬種に見られ、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・リトリバー、ドーベルマン・ピンシェル、ラブラドール・リトリバー、アイリッシュ・セッター、サモエドなどが好発犬種として挙げられている。(洋・成書による)。

  　本院では年に1頭程ではあるが、診断・手術を行い、完治させている。この5年間ではミニチュア・ダックスフントが4頭、ヨークシャ・テリアが1頭であり、M・ダックスが多いのは遺伝子学的に繁殖犬に問題が有るのかも知れない。

　　まず、解剖と病態から入ろう。
　　
　　正常の動物においては、腸管・胃・脾臓から心臓に戻る血液は心臓に直接環流するのではなく、必ず門脈を経由して肝臓に入り、肝内では放射状に分岐して毛細血管となり、肝細胞に栄養分と有害物の代謝・解毒を任せ、その代謝物を肝細胞から受け取った毛細血管がまとまって肝静脈となり、最後に後大静脈に合流して心臓に戻る。

　　繰り返すが胃、脾あるいは腸管からの静脈血は、門脈を介して全て肝臓に送られるのが正常な解剖である。門脈-大静脈短絡症では、肝臓外・内の奇形血管を介して、一部の血液が直接後大静脈に入り、心臓へと還流される。

　　従って、腸管で吸収された物質が肝臓で代謝・解毒されることなく、全身の血液を回ることになる。そしてこの物質、特にアンモニア(NH3)が肝性脳症を惹き起こす。

　　臨床症状は多岐に亘る。成長不良、体格が小さい、体重減少、間欠的食欲不振、抑鬱、嘔吐、多飲多渇症、多尿症、流唾症、行動の変化など様々である。

　　病態が進行すると肝性脳症へと移行する。肝性脳症は血中アンモニア濃度の上昇による。運動失調症、脱力・衰弱、昏迷、旋回運動、痙攣、昏睡まで悪化する。

　　診断としては流唾症や痙攣など重篤になれば本症が強く疑われる。多くは生後3〜4ヶ月齢で診断されるが、数歳を超えるケースもある。特に食直後に症状が悪化するため、これが確認されれば本症がさらに確信的となる。これは蛋白の消化・吸収により血中アンモニア濃度が上昇するためである。総胆汁酸も上昇するためその血中濃度測定も重要となる。その他としては、レントゲン撮影やエコー検査で肝臓が小さいこと(小肝症)が確認されることが多い。小肝症は短絡により門脈から肝臓への血流量が減少したことに原因する。

　　血中アンモニア濃度(正常値は高くても100μg/dl以下)、血中総胆汁酸濃度の上昇、小肝症の確認、肝性脳症の存在が有れば、本症を強く疑い、麻酔に十二分の配慮をして、試験的開腹を行う。短絡した血管が後大静脈に連絡しているかを目視で確認するか、それが不可能であった場合には血管造影を行う。

　　短絡した血管が確定できれば、周囲の組織から分離した短絡血管にアメロイド・リング(Ameroid ring、Ameroid constrictorとも言う。)を装着する。アメロイド・リング内に納められた短絡血管はリングの内側の成分(カゼイン=Casein)が数日〜数週間の期間(血管とリングの径による)で膨張することで絞約されて決行が遮断される。血管閉鎖はカゼインと血管周囲組織との炎症反応(異物反応)による可能性も示唆されている。これにより、短絡血管を介して後大静脈に流れていた血液が門脈を通って肝臓に入る。
　　
　　術後は翌日より全身症状の明らかな改善が見られるケース(リングの絞約だけでなく、手術による血管への刺激やリングによる物理的圧迫による血管の狭窄も考えられる)も有れば、黄疸の出現や下肢・下腹部の浮腫、腹水の貯留などが現れ、数日間は目が離せない症例まである。短絡血管への血流量、短絡血管の完全な絞約までの時間、血流量が増加した肝臓の予備能などの要因で術後経過が左右される。点滴や強肝剤の投与が必須である。術後は2〜5日程度の入院で完治となる。

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<pubDate>Mon, 22 Oct 2007 18:51:03 +0900</pubDate>
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<title>防げる骨折。</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/7.htm</link>
<description>　　秋口や春先の陽気の良い時節、就職や卒業・入学シーズンなど人間の心が浮かれる時期、盆・正月など多忙な時は動物の交通事故などの事例が多い。

　　気の緩みから散歩中にリードを放す、発情シーズンに家・敷地内からの逃走、忙しさから子供に動物の世話を任せるなど・・・の理由がある。

　　気の緩みがちな今からの季節、動物の飼養管理に抜かりのないように、啓発として幾つかの症例を挙げてみる。

　　症例1は2歳、2.9kgのトイ・プードル。2mの台から落下。右前肢前腕骨の骨折。T字型のプレートで整復。小型犬で脚の細い犬種(トイ・プードル、チワワ、パピヨン、ポメラニアン、イタリアングレーハウンドなど)では簡単に骨折する。決まって前腕の遠位端である。動物をテーブルやソファー、ベッドなど高いところからの飛び降りの癖をつけない。夜間病院(宮崎犬猫総合病院)の症例で市外から来院。(写真1、2)。

　　症例2は1歳6ヶ月のM.ダックスフントの骨盤骨折の症例である。抱っこしていたら落下。すぐに抱き上げようとしたら、噛み付いてきたので放り投げたとのことで来院。動物は痛い時、飼い主にも構わず思いっきり咬んでくるので注意が必要である。(写真3、4)。

　　症例3は2ヶ月前に両後肢の先天性膝蓋骨脱臼の整復手術を実施した10ヶ月齢、2.34kgのチワワの症例。子供が抱いていて患犬が落下。両方の前腕骨遠位端を骨折。ほんの2ヶ月で4肢全てにメスが入った症例は珍しい。子供は動物が暴れるなどすると、すぐに手を離すので日頃より注意を促しておくこと。(写真5、6、7)。

　　症例4は年齢9歳、40kgの雌のシェパード。軽トラから飛び降り、両上腕骨を骨折。その後に右大腿骨と第7腰椎と仙骨の骨折も判明。前肢の手術前にその不自由さから、転倒し大腿骨とその他も骨折したものと考えられる。本症例は高齢等の理由で3回に分けて手術を実施した。本症例も夜間病院に来院。車からの飛び降り癖はつけないよう要注意。(写真8、9、10、11)。

　　症例5は11歳、3.32kgの雄チワワ。前日に家から逃走。両下顎を骨折して夜間病院に来院。交通事故か、喧嘩などによるものか骨折の直接の原因は不明だが、歯槽膿漏による顎骨の吸収像が顕著であることから、軽度の外的衝撃で簡単に骨折したのであろう。歯石のケアーも怠らずに。(写真12、13)
　　
　　症例6は6ヶ月、4.1kgの雄のM.ダックスフントで第6腰椎の椎体骨折の症例。これも交通事故である。腰椎の完全骨折のため、安楽死も考えた症例である。骨折部位が第6腰椎で馬尾神経が運よく切断されず、伸展で済んだ症例である。それにしても超ラッキーな症例であった。手術で後遺症も無く、完治、メデタシ、メデタシ。(写真14、15、16)

　　以上、最近夜間病院に来院した症例を混じえて、幾つかの症例を紹介した。交通事故の症例は、「運良く命が有った。」と考えないといけない。病院に来た時点で既に「事切れている」ことも、全くをもって珍しいことではない。

　　人間はもとより、猛暑から解放された動物も、秋口以降、浮かれ気味となる。くれぐれも御注意を。

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<pubDate>Sun, 07 Oct 2007 18:35:37 +0900</pubDate>
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<title>イヌ、ネコの乳腺腫瘍の怖さを知ろう!</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/6.htm</link>
<description>　　イヌの乳腺腫瘍はイヌ全体の腫瘍の中で最も多い腫瘍である。0(ゼロ)歳時で初回発情(初回発情は6ヶ月齢以上になると起こる。一般に大型犬は小型犬より遅い。)が来る前に避妊手術を受けた場合、生涯で乳腺腫瘍に罹患する確率は1万頭に5頭である(0.05%)。発情を2回経験するとその確率は4頭に1頭(25%)と急激に上がる。生涯避妊手術を受けなかった場合は2頭に1頭(50%)である。

　　イヌの乳腺腫瘍の悪性率は約50%である。そしてその転移率も50%である。

　　未避妊雌イヌの半分が乳腺腫瘍に罹患し、そのうちの半数が悪性、さらに悪性の場合の半数が主に肺に転移する(写真1)。これを獣医師の間では、50(フィフティー)-50(フィフティー)-50(フィフティー)ルールと呼んでいる。

  　イヌの細胞診の悪性正診率は90%以上と高いが、良性正診率は60〜75%と低い。良性正診率が低いということは、真は悪性の乳腺腫瘍を良性と誤診することで、手術をする必要が無いと判断することに他ならない。従って、通常イヌの乳腺腫瘍は早期にかつ広範に外科的摘出を実施し、その後に組織検査を行う。

　　イヌの悪性乳腺腫瘍の中でも、悪性中の悪性のものが未分化型の癌で、炎症性乳癌と言われるものである。悪性乳腺腫瘍の8%を占める(良性乳腺腫瘍を含めた乳腺腫瘍全体では4%となる)。この腫瘍は乳腺の腫瘤が急激に大きくなり、かつ硬結と皮膚の炎症を伴う。片側(両側の場合もある)の5つの乳頭(乳腺)全体が帯状に硬結し、熱感も明らかである。ひどいものは表皮に小さな多数の水泡や出血プラーク(Plaque=斑点)を伴う(写真2)。

　　イヌ、ネコの乳腺は通常イヌでは左右で5対、ネコでは4対ある。ここで重要なことは左右の乳腺は正中で隔絶されているが、片側の5つもしくは4つの乳腺は血管とリンパ管で繋がっていることである。この解剖的特徴は手術の術式と深く関係する。イヌの炎症性乳癌や後述のネコの乳癌は皮膚への浸潤で正中を越えて反対側に拡大する。

　　1例目は日前に2〜3週間前に乳腺のしこり(腫瘤)に気づき急に大きくなったとのことで来院した、15歳の未避妊雑種犬の症例である。一見して炎症性乳癌が疑われたため、バイオプシー・ガンにて組織を採取して、急ぎの組織検査を依頼した。炎症性乳癌の組織診断が得られて、その僅か10日後に重度の発咳(はつがい)で来院した。レントゲン撮影と超音波検査で乳癌の転移と考えられる胸水の貯留(写真3、転移性癌性胸膜炎)が認められた。乳腺はさらに腫れ上がり、乳頭からは血様浸出液が見られた。恐ろしい限りだ。

　　イヌの炎症性乳癌は、発見時既に転移している場合が多いこと、術創が治癒しないことから、その手術は重度の潰瘍や出血がある症例など特別な場合を除き、禁忌とされている。

　　
　　一方、ネコの乳腺腫瘍は、血液、中でもリンパ系の癌、皮膚の腫瘍に次いで3番目に多い腫瘍である。雌ネコに限定すると全腫瘍の約17%という報告がある。ネコの乳腺腫瘍の悪性度はヒトに似て極めて高く、80%以上である。

　　ネコの場合、悪性の割合と悪性度が極めて高いため、初回の手術で附属のリンパ節(鼠径リンパ節、腋窩リンパ節)の廓清を含む広範囲の乳腺摘出が必要となる。診断的な細胞診はイヌと違って悪性を良性と誤診する可能性は低い。ネコでは、乳腺のしこりを発見した時点で、既にリンパ節(附属リンパ節や前胸骨リンパ節)や肺などに転移している場合も少なくない。このため、術前には胸部レントゲン撮影を必ず実施する。

　　2例目は2週間前からの嘔吐、食欲低下と廃絶を主訴として来院した15歳の未避妊雌ネコで、来院時既に胸水が貯留(写真5)しており、胸腔の穿刺で採取した液体は中性脂肪を多量に含有する乳ビ(写真4)であった。これを遠心分離して細胞診を行うと、乳ビ胸水の中に乳癌細胞(写真6)が見られた。胸壁には3cm程の乳腺腫瘤が認められた。このことは乳癌の胸腔内の転移により、胸管を含むリンパ管の破綻を意味している。この例に見られるように、ネコの乳癌の悪性度は恐ろしい程に極めて高い。

　　化学療法(制癌剤など)は効果を示す報告もあるが、副作用で寿命を短縮することも有り得る。転移を防ぐ為、あるいは炎症を抑制するための目的での使用はある程度積極的であっても良い。

　　総括すると、イヌ、ネコの乳腺腫瘍もヒトと同様に早期発見、早期外科的摘出を行うことに尽きる。乳腺にしこりを発見したら、ヒトと同様に対処していただきたい。勿論、手術を実施する場合にはレントゲン撮影、超音波検査、血液検査、細胞診などの諸検査で術前評価を慎重に行う。インフォームド・コンセント(Informed consent=治療に先立っての獣医師からの十分でかつ納得のいく説明。)で予後を含め全てを納得して、治療に当たらなければならない。

　　イヌ、ネコでは繁殖させる希望がなければ、初回発情の前に避妊手術を行うことを勧めます。ペットを飼う前から避妊について家族で相談しておきましょう。

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<pubDate>Sun, 23 Sep 2007 18:40:09 +0900</pubDate>
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<title>皮膚・皮下織のしこりの診断・治療</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/5.htm</link>
<description>　　今回は皮膚・皮下織のしこりの診断・治療について書いてみたい。

　　しこりは専門的には腫瘤という。一般に英語ではMassと呼ぶ。腫瘤は大きく腫瘍(Tumor)と何らかの炎症(Inflamation)によるしこりに分けられる。腫瘍は、別名新生物(Neoplasia)ともいい、良性(Benign)と悪性(Malignant)に分かれる。

　　イヌの皮膚・皮下織の腫瘍は全ての腫瘍の30%を占める。乳腺腫瘍に次いで2番目に多い。避妊手術をしていない雌イヌの約50%が罹患する乳腺腫瘍(次回のテーマ)を加えると、実にイヌの腫瘍のほぼ半分が体表の腫瘍である。

　　イヌの皮膚・皮下織に多く見られる腫瘍の具体的名称は、乳頭腫(いわゆる疣=イボ)、皮脂腺腫、脂肪腫、組織球腫、肥満細胞腫などである。

　　一方、ネコの皮膚・皮下織の腫瘍は悪性リンパ腫や血液(リンパ系)の癌に次いで2番目に多い。乳腺腫瘍は3番目である。

　　ネコの皮膚・皮下織の腫瘍は全腫瘍の15〜20%を占め、基底細胞腫、扁平上皮癌、繊維肉腫、肥満細胞腫が多いとされる。

　　腫瘍の発生率をヒトと比較すると、イヌは2倍の腫瘍が発生し、逆にネコでは人の半分の発生率である。

　　そこで最も肝心なことであるが、生死にかかわる皮膚・皮下織の腫瘍の悪性率は、イヌで20%、ネコでは65%に上る。

　　腫瘍はヒトと同様に年齢と共に発症率が高まるため、伴侶動物として高齢化した昨今は、毎日のように「このしこりは何ですか?」、「この1、2週間で急に大きくなったのですが、まさか癌ではありませんよね」などの主訴で来院する。

　　咬傷や外傷、異物などが原因する炎症や化膿(膿瘍=Abscess)の結果として腫瘤化し、来院する患畜も少なくない。都会と田舎では飼育環境が異なるため、罹患率は不詳だが、宮崎のネコについては腫瘍よりも多発すると考える。

　　診断は細胞診と組織診断による。細胞診は通常、動物に対して麻酔は不要であり、手技も簡単だが、組織診断は鎮静や局所麻酔、場合によっては全身麻酔が必要となる。

　　細胞診は注射ポンプと注射針(写真1)が有れば、獣医師なら誰でも簡単に実施できる。広めに消毒をして、2.5mlか5mlの注射ポンプを刺し、ポンプの内筒を引いて、ポンプ内を真空状態とし、針先を数方向に変えて針の中に組織を吸引する。この手技を針吸引生検と呼び、横文字ではFine　needle　aspiration  biopsy(FNA)となる。このようにして採った組織(細胞)をスライドガラスに載せ、染色後顕微鏡を覗いて診断する。

　　組織診断は一般にファースト・チョイス(First　choice)ではないが、手術禁忌の炎症性乳癌や断脚等の重大な決断を要するケースでは、その診断を急がなくてはならない。組織の採取は鋏やメスで外科的に行うか、バイオプシー・ガン(Biopsy　gun)(写真2)を使用し、Core(Punch)=として爪楊枝程度の組織を採取してホルマリン固定した後、検査に提出する。

　　細胞診の真の確定診断確率は約80%で、20%は診断が不可かもしくは誤った診断であるが、簡単・迅速でコストがかからないという利点がある。組織診断の確定診断率は100%と考えてよい。治療方針を決定するのにこの80%は、臨床上満足できる数字である。

　　炎症や膿瘍の診断は比較的容易だが、腫瘍の場合には、必ず、専門的知識をもつ獣医師や信頼のおける獣医の検査機関に診断を仰がなくてはならない。ヒトの検査機関に依頼してはならない。

　　良性か悪性かは天と地の差である。良性であれば、腫瘍のみの摘出でサージカル・マージン(Surgical　margin)はさほど取らなくてよい。

　　悪性では最低3cmのサージカル・マージンが必要となる。腹部など皮膚に余裕がある部位はあまり困らないが、四肢や顔面では難渋する・・・困り果てる・・・しばらくの悩みの種となる。

　　皮膚や皮下織の腫瘍は幸いにも触知可能である。年齢にかかわらず最低週に1回は全身の皮膚を軽く手で触って診るべきである。若齢でも悪性腫瘍のリスクがゼロではない。ついでに口腔内のチェックも忘れないことだ。特にイヌの口腔内腫瘍は全腫瘍の6%を占め、4番目に多い腫瘍である。黒色腫(メラノーマ=Melanoma)や扁平上皮癌、繊維肉腫などの悪性腫瘍がある。イヌでは鼻腔内腫瘍も多いので、鼻梁の盛り上りにも気を付けなければならない。

　　ヒトと同様に、腫瘍は早期発見、早期外科的摘出・切除が鉄則である。皮膚・皮下織の腫瘍は、悪性であっても、拡大手術(適切なサージカル・マージンの確保、皮膚移植の実施など)や付属リンパ節の廓清により完治する場合が少なくない。発見したら迷わず、できる限り早めに病院に行くべきである。

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<pubDate>Sun, 09 Sep 2007 21:36:25 +0900</pubDate>
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<title>ミニチュア・ダックスフントの椎間板ヘルニアの手術法</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/4.htm</link>
<description>　　ミニチュア・ダックスフントが超ブーム犬種となったのが何年前だろうか?。このところの診療ではM・ダックスの椎間板ヘルニアが目立って増加した印象だ。5歳前後を過ぎると2、3頭に1頭は背部圧痛(バックペイン)や歩様蹌踉、後肢の不全あるいは全麻痺膀胱麻痺(排尿困難)、深部痛覚の消失の症状で来院する。
　　

　　椎間板ヘルニアの神経麻痺の程度は5段階に分けられる。?度が脊椎の疼痛(背部圧痛=バックペイン)、?度が運動失調・不全麻痺、?度が完全麻痺・随意運動不能、?度が排尿不能、?度が深部痛覚の消失である。?〜?度では、1週間〜10日間の安静(ケージレスト)とステロイドやビタミンB剤の投与などの内科(保存)療法を行った場合の治療成績を外科手術療法を選択した時の成績と比較すると、リハビリに要する期間が内科療法の方が長いが、両者の治療成績(通常の生活に問題が残らない事)に数値的な大差はなく改善(84〜100%)がみられる。。

　　
　　そこで問題なのがいつ、如何なる時期に手術に踏切るかである。?度の深部痛覚の消失した症例では一般に早々の手術が必要とされている。?度の内科療法(保存療法)では治療の成功率は10%を下回る。?〜?度でも安静や内科療法に反応しない場合、特に痛みが緩和されなければ手術を躊躇すべきでない。手術は脊髄を露出させるため、いくつかのリスクを伴う。私の経験では脊髄造影のリスク、手術中の神経刺激や術後の出血が問題と考える。(表を参照のこと)


　　脊髄造影は腰椎間より注射針で脊髄軟膜と硬膜の1ミリあるかないかの僅かな間隙(クモ膜下腔)に造影剤を注入する。高度なテクニックが必要である。MRIもしくはCTがなければ手術部位の特定には欠かせない検査である。


　　神経刺激に関しては外科手術の基本中の基本であるGentle(優しく)であることに心掛け、前日のアルコールを控えて集中力を高めればクリアーできる。


　　手術中の出血コントロールは可能だが、術後に起こり得る脊髄の腹側直下にある静脈洞からの再出血は、動物が術後に安静にしてもらう事が重要である。術後3日間はじっとしていてもらいたい。止血剤の投与も必須だ。人間の場合も術後の脊髄周囲からの出血は逆に脊髄の圧迫を惹き起こすことにつながり、重大な術後合併症の一つである。


　　術後は5日から7日の入院で退院可能である。術後15日程度で全抜糸を行い、術後は5〜7日からリハビリの毎日だ。リハビリは麻痺の程度により、湯槽(ゆぶね)での遊泳運動から、タスキ様の布を両股に通して吊りながら歩行・屈伸させる方法、飼い主の手で直に後肢を屈曲・伸展させる方法などがある。

　　
　　手術をしてもしなくてもこのリハビリが日常の生活を取り戻せるか否かの重要なポイントとなる。半分以上がリハビリに依存していると言っても過言でない。特にリハビリ開始からの2週間は他の事そっちのけでリハビリに専念すべきである。自宅で不可能なら昼間動物病院に預けて病院のスタッフにやってもらうことを勧める。


　　写真は最近、たばる動物病院で手術した症例の手術前の脊髄造影と手術中のものである。手術が必要な箇所は、椎間板が石灰化している部位(第12胸椎-第1腰椎間、第1腰椎-第2腰椎間の2箇所)ではなく、真の脊髄圧迫部位は第2第-3腰椎間(矢印)であることが判る。


　　術式は片側椎弓切除によるもので、白く横長の部位が露出した脊髄(矢印)である。この症例では突出した椎間板物質そのものの摘出も行った。本症例は術後経過良好で術後6日目に退院した。


　　表.治療の成功率(%)と回復に要する期間(週)(Davies and Sharp 1983)

内科療法　      
?度　100% 　 3週　    　　　
?度　 84%　  6週　    
?度　100%　  9週　      
?度　 50%   12週　     
?度　　7%　　　  　  
　　　　　　　　　    
外科療法      
?度　100%  
?度　100%
?度   95%    1週
?度　 90%  2.5週
?度　 50% (48時間以内の手術)2週
　　　　6% (48時間以上経過しての手術)</description>
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<pubDate>Sun, 29 Jul 2007 18:10:01 +0900</pubDate>
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<title>健康診断に骨格系のレントゲン撮影をお奨めします。</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/3.htm</link>
<description>　　ヒトでのナウい健康診断と云えば、血中コレステロールや中性脂肪濃度・血糖値、皮下・内臓脂肪量などメタボリック症候群に関連する項目のチェックでしょうか?。胃や大腸の内視鏡も心配です。CT(computed tomography)やMRI(magnetic resonance imaging)による脳ドック、PET(positoron emission tomography)による全身癌検診も気になります。東京有明にある癌研有明病院の全身癌ドック(dock)は1泊2日のコースで、その費用は30万円です。

　　
　　ペットの健康診断はどこまでやれば良いのか、気になるところです。今までの健康診断は身体検査と血液検査、超音波検査、尿検査が主体でした。それ以上に突っ込んだ検査項目を推奨している機関や学者もいないようです。東京の動物病院では健診にCTを行っている所もあると聞きますが、動物では全身麻酔が必要なため、これには賛否が分かれるでしょう。

　　　
　　毎日の診療で最近急激に増加している症例が脊椎の変形性脊椎症(spondylosis deformans)や椎間板ヘルニア(intervertebral disk protrusion)、椎間板・脊椎炎(discospondylitis)、関節(特に股関節や肘関節、膝関節)の変形性骨関節疾患(DJD=degenerative joint disease、osteo-arthrosis deformans)や骨関節炎(osteoarthritis)などの骨格系の疾患です。椎間板ヘルニアや変形性脊椎症は、場合によると生死に係わってくる病気です。変形性骨関節疾患や骨関節炎も寝たきりを余儀なくされることも少なくありません。これらの病気は散歩や運動を嫌がるなどの傾向はあるものの、前兆なく突発することがほとんどです。きっかけは階段の昇降時、急激な運動時、ベッドやソファーからの飛び降り時など、患部に大きな力が加わることが起因となって発症し、背部(背骨)の圧痛、ビッコや後躯(後肢)の麻痺などの症状を呈します。


　　診断は単純のレントゲン撮影で概ね可能です。発症を予知することもこのレントゲン像の読影から可能です。


　　発症年齢は椎間板ヘルニアが5歳前後から、特にダックスフントで多発します。その他の変形性脊椎症や変形性骨関節疾患などはヒトと同じように年金受給年齢前後から多くみられるようになります。ペットの年金受給年齢は、5kg前後の小型犬や猫が12歳位、10kg前後の中型犬が10歳位、20kg前後の大型犬が8歳位と考えられています。ダックスフントは4〜5歳までに少なくとも1回は、その他では年金受給年齢の1〜2年前にはレントゲン撮影の健・検診を受けましょう。


　　大切な事は、発症予兆の有無を知ることで予防の方策を取ることです。それには、体重のコントロールや運動制限、生活や行動様式(パターン)の改善、軟骨再生に効果のあるサプリメントの服用などがあり、意外に簡単なものです。</description>
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<pubDate>Sat, 14 Jul 2007 17:21:45 +0900</pubDate>
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<title>感染阻止の黄金時間</title>
<link>http://tabaru.9syu.net/case/perm/2.htm</link>
<description>　ペットのケンカ傷=咬傷は日常茶飯事の疾患です。特にネコで多く見られます。外に出すネコは縄張り争いのため、特に発情している時期に多発します。ネコの皮膚は強靭なため、皮膚の表面は大したことでなくとも、皮下組織や筋肉は裂傷や部分断裂をはじめ甚大な損傷を惹き起こしていることが少なくありません。後者の方が多いくらいです。稀には胸腔内や(皮質)骨の内部である骨髄まで犬歯や爪が侵入する場合もあり、生死にかかわる膿胸や骨髄炎を罹患します。
　ケンカなどによる感染症の場合、細菌が体内に入って6〜8時間内に傷の洗滌を行い、抗生物質の投与を実施すれば、かなりの確率で感染の成立を抑えることが可能です。この最初の6〜8時間は体内に入った細菌数が感染を成立させ得るに足る増殖に至る前の段階であり、この時間帯を感染阻止の”黄金期”と言います。傷口が大きければ洗滌後に皮膚の縫合やドレインの設置が必要となります。
　ペットを外に出さないことやリーシュを放さないことでケンカの機会を無くすことが重要です。止むを得ず受傷した場合には動物病院に出来るだけ早く連れて行くか、病院が開いてない時の為に予め予備の抗生剤を貰っておくことも必要でしょう。
　因みに私が動物に引っ掻かれたり、咬まれたりした場合には、その場で水道の水を流しながら患部を揉むようにして血液を押し出します。これにより患部からの細菌の除去が可能となります。傷口にはアロンアルファを塗布すればとりあえず仕事が続行でき、その後も通常問題なく経過します。</description>
<pubDate>Mon, 18 Jun 2007 17:14:26 +0900</pubDate>
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