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ペット豆知識 vol.7 -外耳炎は治る疾患です!-

 立秋とは名ばかり、まだまだ猛暑の真夏日が進行中です。「うちの犬もこの夏を超えられれば、あと一年寿命が延びる・・・・・」とは良く聞く言葉です。我々獣医師も、心臓病や気管虚脱症などの症例では、一部分同感するところです。
 
 梅雨から初秋にかけての高温・多湿の時候に多い病気の一つが、今回のテーマである「外耳炎」です。冬場は小康状態であった外耳炎がこの時期再燃することもしばしばです。
 頭をぶるぶる振る、後ろ足で耳を掻き毟る、耳が臭い、ジュクジュクの耳ダレが出ているといった症状は外耳炎の兆候です。早めの処置はもちろん、普段からの手入れで外耳炎を防ぎましょう。また、上記のような症状がすでに出てしまっている方でも、諦めるには早すぎます。外耳炎は治せる病気です。

 疑問に思いませんか?、なぜ外耳炎がここまで犬に多いのか。いや、僕ら獣医師はそれだけ多くの外耳炎に出会います。その答えは耳の解剖学的な構造に原因しています。

 外耳道は軟骨組織で構成され、耳介(耳の部分)で集音した音を鼓膜まで伝えるトンネルとして存在します。犬の耳、特に垂れ耳の犬種ではこの外耳道の通気性が非常に悪く、外耳道は体温によって高温多湿に保たれます。しかも決定的に違うのは、犬には垂直耳道と水平耳道があるということです。人間では、あえて表現するなら水平耳道しかありません。どういうことかというと、犬の外耳は『L字型』になっていて「L」の縦の部分が垂直の部分、横の部分が水平の部分です。水平になったあとの鼓膜に続き中耳があり、さらに小学校で習った「ツチ骨」「キヌタ骨」「アブミ骨」の順で内耳(三半規管や蝸牛)につながり、聴覚神経として最後に脳へと連絡します。

 この垂直、水平耳道があることで耳の通気をさらに複雑にさせ、結果、種々の細菌や酵母菌(主にマラセチア Malassezia pachydermatis)が増殖しやすくなります。ときには既に感染している犬や猫から耳ダニをうつされることも少なくありません。過剰に出た耳垢(みみあか)をエサにして耳ダニ(耳疥癬 Otodectes cyanotis )が繁殖します。耳ダニは、移動する際の機械的刺激や、アレルギーによって強い掻痒感を起こし問題となります。特に夏は細菌や酵母菌の繁殖を容易にし、外耳炎を悪化させやすくなります。

 悪化した外耳炎は、炎症反応によって滲出物(耳ダレ)を分泌し、じゅくじゅくした耳になっていきます。さらに炎症が進むと、中耳にまで炎症が波及して(中耳炎)、内耳をも刺激し(内耳は平衡感覚などを察知する)、運動失調、斜頚(首が病変側に傾く前庭障害)、眼振(目が右左に動き、ちょうど遊園地のコーヒーカップに乗ったあとのような感じ)などの神経症状を起こします。外耳道のそばには顔面神経という脳神経が走っており、炎症が酷くなると神経を刺激して顔面神経麻痺を起こすこともあります。

 ではそもそもの原因はなんでしょうか。原因は多岐にわたります。
・アレルギー性疾患(アトピーなど)に関連
・外傷性(耳を引っ掻いたりして傷がつくことで炎症がスタート)
・人為性(綿棒などの使用で耳道が傷つける。綿棒は耳垢を奥に押し込むだけ)
・異物性(シャンプーや水浴により耳道内に水が残留する。砂などの異物による反応)

 さて、『外耳炎、治します』という大胆なタイトルを付けたのには訳があります。動物病院によっては外耳炎治療にあまり時間をかけようとしません。抗生剤や抗カビ剤、ステロイド製剤などの点耳薬や、それらの合成点耳薬を落としたり、それらの薬の錠剤を内服させるに留まることが多く、しかしながらそれらは根治的な治療ではないかもしれません。

 外耳炎治療の決定打、それは”耳洗浄”です。耳洗浄は、はっきり言って面倒です。面倒というと語弊があるので言い換えますが、一回の処置に時間がかかり、それに一生懸命洗浄しなければいけません。洗浄はケースによって異なりますが、2種類の洗浄液を用います。1つ目の洗浄液で耳道内の“脂”を溶解し、2つ目は消毒液でじゃぶじゃぶ耳の中を洗います。しゃぶしゃぶではだめです。ジャブジャブです。そうすることで耳垢が出てきますし、逆に言えばそこまでしないと耳はきれいにはなりません。ここまでを丁寧に行い、外耳道をかなりのところまで綺麗にして、ここで初めて抗生剤とカビの薬を点耳します。また、耳ダニがいる場合は殺ダニ薬も点耳します。これにはイベルメクチン製剤やフィプロニルスプレーやスポットオン製剤などが用いられます。

 これでOKです。たったこれだけですが、あとは洗浄液と点耳薬を処方して、飼い主さんが家で毎日耳洗浄すれば殆どの症例は好転します。もし家で出来ない場合は定期的に通院しなければなりませんが、基本的には飼い主さんがどこまでがんばれるかに掛かっています。外耳炎は我々獣医師が治すのではなく、あなたが治すのです。

 以上、ここまで犬についてお話してきましたが、少し猫の外耳炎についてもお話しましょう。馴染みが薄いかもしれませんが、猫も外耳炎になります。猫は外耳道が短く、耳が立っている分、犬よりか頻度は低いですが、しばしば外耳炎に罹ります。猫ではダニ性の場合が多い上、外耳炎になりやすい猫種もあります。スコティッシュフォールドなどの耳が垂れているものや、アメリカンショートヘアなど脂の分泌が多い猫種では外耳炎に罹患し易い傾向にあります。
 
 しかし犬と違い、犬と同じような耳洗浄の手技では、比較的容易に鼓膜が破れてしまします。その結果、前庭障害や耳が聞こえなくなるなど、重大な事態を惹き起します。したがって、本当にgentle(=優しく)に、マッサージしながら耳洗浄を行います。

 また、子犬を飼いはじめたあなた、是非小さい時期から耳洗浄の癖をつけてあげてください。日頃からオトナシク耳洗浄のできるペットにすることで、外耳炎の予防が可能となります。意外に感じるかも知れませんが、ウレシイことに「しつけ」の「決定打」でもあります。自宅で耳洗浄ができるペットは、イコール(=)「しつけ優良犬」でもあります。耳洗浄を好きな犬はいませんが、嫌なことをすることで我慢するという「しつけ」につながるのです。

 外耳炎でお悩みの方も、幼犬を飼い始めたあなたも、外耳炎を予防しようとしてる方も、一度動物病院にきて、耳洗浄の方法をGETしてみてはいかがでしょうか。

 “外耳炎はいくら高価な点耳薬や内服薬を投与しても、それだけでは治すことができません。飼い主さんの愛情と熱意、そして「耳洗浄」が三位一体となって治せるのです”


文:小川篤志

固定リンク | 2008年08月15日【21】

ペット豆知識 vol.6-ノミ、ダニが媒介する致死的な怖い疾患-

ストップ・ザ・ノミ、ダニ!!

―かゆみのためじゃないっ?
 犬も歩けばダニがつく。猫には小判よりノミダニ駆除剤。みなさん、ノミやダニの“本当の怖さ”知っていますか?今回はノミやダニが媒介する恐ろしい病気についてご紹介します。
 以前フィラリア症について特集しました。フィラリアは蚊によって媒介されますが、ノミやダニについても同じと思ってください。刺されることでのかゆみを防止することが害虫予防の意義と考えられがちですが、我々獣医師が予防を薦める理由は、むしろそれより害虫によって『媒介される感染症』を予防するためであることをまずご理解ください。


―ノミ、及びダニ媒介性疾患
では、ノミやダニによって『媒介される感染症』とはどのようなものがあるのでしょう。そのいくつかをご紹介します。

<ダニ媒介性>
・犬のバベシア症(下記参照)
・犬のヘパトゾーン症:日本ではHepatozoon canisの近縁種の感染例があります。マダニの経口摂取で感染し、通常不顕性ですが、発熱、体重減少、食欲不振、貧血、抑うつ、目鼻の分泌物、下痢、起立不能、骨膜性骨増殖が起こります。確定診断は血液中のガモントを確認します。
・日本紅斑熱:病原体はRickettsia japonicaで、西日本から中部日本に分布、マダニ類の咬傷により感染します。人間にも感染し、死亡例する場合もあります。人ではツツガムシ病との鑑別が必要です。
・ライム病(人獣共通):日本での病原体はシュルツェマダニから分離されるBorrelia gariniiやB.afzelii、ヤマトマダニから分離されるB.japonicaがあります。日本国内での犬のライム病は神経症状が主体で、髄膜炎や脳炎、顔面麻痺などが出現します。循環器症状として、心筋壊死や心内膜炎と、それに伴う房室ブロックが認められます。人では遊走性紅斑が唯一特徴的な病態ですが、犬では認められません。
・野兎病(人獣共通):病原体はFrancisella tularensisで、伝播はダニ、サシバエ、蚊などによります。慢性に経過しますが、高い致死率を示すこともあります。


<ノミ媒介性>
・条虫:いわゆる真田虫と言われるもので犬条虫=瓜実条虫と猫条虫がノミによって媒介されます。人間にも感染し、特に赤ちゃんや小児の口の中に蚤が飛び込むことによります。ノミの幼虫が卵を含む条虫の片節を餌として捕食することで感染が発展・成立します。マンソン裂頭条虫はミジンコとカエルやヘビなどが中間宿主で、ノミは無関係です。
・猫のヘモバルトネラ症
(下記参照)
・猫引っかき病(人獣共通):病原体はBartonella henselaeで猫の爪に病原体が寄生し、人を引っ掻いた際に感染します。猫は無症状ですが、人間に感染した場合、潜伏期は3〜10日で、発熱、受傷部の丘疹・水泡、一側性のリンパ節の腫脹が主な症状です。


 このなかでも、犬バベシア症ヘモバルトネラ症(猫)が非常に重要です。どちらも基本的には赤血球内に寄生する原虫で、発症すると高度な貧血を起こします。

1)犬のバベシア症
 特にバベシア症(病原体は原虫のBabesia gibsoni)は、ここ宮崎で非常に多く見られ、日々の診療では常に診断リスト(ルールアウト)の一つとして頭に入れて置かなくてはならない疾患です。主にフタトゲチマダニが媒介し、他にツリガネチマダニ、 ヤマトマダニ、クリイロコイタマダニがあり、感染の成立にはマダニの吸血を2日以上受ける必要があります。僕がノミダニ駆除について飼い主さんに説明するときは、必ずこのバベシア症の話をするようにしています。なぜなら、駆除なしでは非常に感染のリスクが高く、また致死的な病態を示すためです。
 バベシア原虫は、赤血球のなかで分裂増殖することで物理的に赤血球を破壊したり、白血球がバベシアに感染した赤血球を直接攻撃し、破壊することで貧血が起ります。しかし、実際には、アレルギー的な機序で過剰に免疫反応(正常な赤血球までも破壊させてしまう)を起こすことが問題となり、且つ、重度の血小板減少もおき、非常に「オオゴト」です。他にも、脾腫(脾臓における赤血球と血小板のうっ滞に因る)、血尿、発熱などの症状が見られます。
 診断は、ダニ咬傷の有無、貧血所見、血小板の減少や脾臓摘出手術の往歴(脾臓は免疫=抵抗力=感染防御の親玉的臓器で、脾臓摘出後は感染のリスクが非常に高まるため)などがありますが、決定的なのは顕微鏡下での赤血球内に寄生するバベシア原虫の確認です。特徴的なのは、赤血球内に“双梨状”や“リングフォーム”と表現される虫体が確認できることです。
 治療には、抗バベシア薬である『ガナゼック』という薬が有効ですが、小脳出血による痙攣など非常に副作用が強いのが問題です。かつ「ガナゼック」は犬には認可されていない薬ですが、他に有効な薬がないため使用せざるを得ません。一部の抗菌剤にも効果がありますが、臨床的な効果は確立されていません。
 もともとは家畜の伝染病として恐れられた病気で、現在でも牛(特に放牧牛)の死因にはバベシア(正確には、牛ではピロプラズマ症という)によるものも多いです。「ガナゼック」は牛のピロプラズマ症のための薬なのです。

2)猫のヘモバルトネラ症(Haemobartonellosis)
 ヘモバルトネラ症は犬(病原体はH.canis)にも猫(H.felis)にもある疾患ですが、病原体が違うため、犬と猫の間では伝染しません。犬では不顕性感染(感染しても症状がない状態)であることが多く、特に猫で問題となる病気です。犬ではマダニによって感染しますが、猫ではノミ、猫同士のケンカや母子感染でも伝播し、野外の猫はかなり高率で感染していると言われています。原虫であるバベシアとは違い、赤血球の表面に寄生するマイコプラズマという生物だということが最近分かりました。こちらも貧血が問題となり重度では輸血も検討され、こちらもオオゴトです。また、猫白血病や猫エイズに感染している猫では、より重度になる場合が多く、ワクチンの重要性についても近々特集する予定です。
 治療は、主に抗生物質(テトラサイクリン系、ニューキノロン系)と貧血が進んだ場合には輸血も実施します。死に至る場合も少なくない疾患です。

 ダニやノミは犬、猫はもちろん、問題は人間にも感染する病気をもっており、例えばダニが付着した犬が家に戻ったとき、そのダニが人間を噛むことで感染するといったルートも十分考えられます。
 宮崎では、特に山の中や河川敷にマダニが多く、ダニやノミが非常に“付きやすい”場所であると思ってください。犬も歩けばダニが付き、猫に小判はあげなくてもノミは付きます。じゃあどうしたらこれらの害虫から、そしてそれらが媒介する病気から可愛いペット達を守れるのでしょうか。


――試す価値ありノミダニ駆除剤
 できる事なら、ダニ、ノミの居る場所や居そうな処にペットを近づけない・連れて行かないことです。しかし、散歩などどうしても屋外に出たり、病院やペット・サロンに連れて行かざるを得ないのも事実です。この15年でノミ・ダニの予防が浸透した結果、バベシア症やノミアレルギーの症例は5分の1〜10分の1まで減少していると思われます。ノミ・ダニ駆除剤はあくまでもノミ・ダニを殺す薬で、病原体を殺滅するものではありませんが、病気感染の防御に多大の貢献をしていることに間違いはありません。
 量販店やスーパーでよく「ノミダニ駆除剤」とか「ノミ取り首輪」とかを目にします。しかし、はっきり言って効果はとても弱いです。むしろ首輪を咬んで中毒を起こしたりすることもあり、実際に先月、当救急病院にもペルメトリン中毒(ノミ取り首輪の成分)を起こした猫が瀕死の状態で連れてこられました。数日後には回復しましたが、きっともう二度とノミ取り首輪を買おうとは思わないでしょう。
 そこで、我々動物病院ではフロントラインやその他のスポットオン剤を処方しています。これらの類似品は量販店にもありますが、成分が違ったり、成分は同じでも量や濃度が半分であったりします。「フロントライン」をはじめ病院扱いで正規の駆除剤を月に一回、背中に垂らすだけでほぼ予防できます。まさに「ストップ・ザ・ノミ、ダニ」。未予防の方は、一度動物病院に相談されてはいかがでしょうか。

――最後に・・・
 さて、ストップ・ザ・ノミダニと題してお話してきましたが、ノミやダニの怖さはわかっていただけたでしょうか。ほかにも猫のアレルギーの多くはノミアレルギー(アレルゲンはノミの唾液)に関連してるといわれていますし、ダニもアレルギーや大量寄生では貧血をおこします。ちなみに僕はシェルティーに寄生した100匹以上のマダニを取ったこともあります。(ダニは頑丈な口器をがっちり皮ふに刺して吸血しますので、決して安易に取らないように!)
 もちろん犬猫に寄生することも問題ですが、人間にも多くの病気を媒介します。代表的なのは日本紅斑熱で、これはダニによって媒介されます。先日ニュースでこれに感染した70代の女性が亡くなりました。それに、本来ノミが保有する病原体が猫の爪を介して感染するのが猫引っかき病(Bartonella henselaeによる)です。小学校の頃、お世辞にも真面目とは言い難い性格だったある友達が、体育の授業を「猫ひっかき病」で欠席しました。しかし性格が災いしたのか、体育教師にはまったく信じてもらえず、数日後彼は「本当なんです。猫ひっかき病にかかってたんです!」と泣きながら訴えていたのを影からじっと観察したのを覚えています。ふざけた名前なので信用のない人が感染すると社会では通用しなそうですが、結構怖い病気なんですよ。

 ノミやダニは蚊と違い一年を通してあなたとあなたのペットを狙っています。くれぐれも予防は定期的に。

文:小川篤志


固定リンク | 2008年08月08日【18】

★熱中症についての追記★

愛犬の熱中症、ご用心 暑さに弱い短頭種・高齢犬

Yahooのトップニュースで熱中症について特集されました。
何度も言うようですが、本当に熱中症が多く、毎日のように救急病院に連れてこられます。とくに多いのが、屋外で飼われている大型犬、パグ、ブルドッグなどの短頭種です。
まだまだ暑い日が続いていますので、引き続き注意をしてください。

固定リンク | 2008年08月05日【20】

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