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ペット豆知識・号外-あなたのペット知識度。知っていて損をしないワン・ニャン問-

 いつも難しい話になってしまいがちなこのコーナー。もはや豆知識とは呼べないほどマニアックな状態になってしまっていることを反省(?)しております。読者離れを恐れた私は、今回号外として『あなたのペット豆知識テスト』をお送りいたします。
 忙しいたばる動物病院のドクター達の協力を仰ぎ、普段はバカバカしくて聞けないような質問から、思わず『へえ〜』と感心してしまうようなトリビアまで、よりどりみどりの10問をご用意しました。トップは私から行かせていただきます。
みかんでも剥きながら、かる〜い気持ちでご堪能ください。




●ここ掘れワンワン。そこには何が!? (難易度★☆☆☆☆)
 気が付くと、せっかくきれいにガーデニングした自慢の庭がぐちゃぐちゃに。犯人はそう、愛犬です。何しとんねんッと突っ込みたくなるこのいたずら。実はヒマつぶしが原因であるようです。童話のように地下に黄金は眠っておらず、ただ退屈なために本能的ないたずらをしているにすぎません。
 なぜ、そのような本能があるのかというと、犬の祖先、狼たちはいつでもご飯にありつけられるわけではないので穴を掘って食肉を周りから隠す習性があるためだと考えられています。
 枕や毛布をひたすら掘るのは、足の裏のパッドからの分泌物(汗)をこすり付けて自分の臭いを漂わせてから寝ることで、犬は安心して眠りに付くことができるからです。ちなみに、よく「ここ掘れワンワン」するのはテリア種やダックスで、彼らは元々穴掘り名人の血が流れています。テリアにいたっては語源が“テラ”といってこれは土や地面の意味があり、それだけ穴掘り好きな犬種なんですね。ただガーデニングを荒らすだけならいいですが、観葉植物には毒性があります。愛犬を退屈させないよう気をつけましょう笑。(Dr.小川)


●ノミ・マダニ駆除剤、ホームセンターで買ってもいいでしょ? (難易度★★☆☆☆)
 病院で処方されるノミ・マダニ駆除剤(商品A)の成分はフィプロニルという成分。商品Bはイミダクロプリドとペルメトリンの合剤。商品Aは駆除率ほぼ100%で、成分は皮脂腺に蓄えられるため投与前後2日間の計4日間シャンプーしなければ効果は1ヶ月持続します。また、妊娠中や授乳中でも使用可で、スプレータイプでは生後2日目から使えます。一方、ホームセンターやペットショップで売られているスポットオン製剤(商品C、D,E)の成分はピレスロイド系です。しかし、これら量販店の商品は病院処方の製剤に比べて明らかに駆除率が劣り、その上シャンプーにより効果がテキメンに低下するため、1ヶ月間はシャンプー無しで過ごさなければなりません。1年を通してノミやダニの多い宮崎、確実に駆除するためにどちらを選びますか?
 余談ですが、当病院では犬や猫を何匹か飼っている方には大きいサイズ(量が違うだけで濃度は同じ)の商品Aを分けて使用してもらっています。小さいサイズを何匹分か買うよりもかなり経済的なのです。(ペンネーム ポニョ)

●犬・猫の諺と慣用句(難易度★★★★☆)
 犬と猫にまつわることわざと慣用句を挙げてみました。空白を埋めてみましょう。
《○を見て犬を放つ》     
《飼い犬に○をかまれる》
《○○の犬》         
《○○○○は犬も食わぬ》 
《○頭狗肉》         
《猫も○○も》
《猫は○○○○を○○で忘れる》
《猫が肥えれば○○が痩せる》 
《○○一人は猫千匹》     
《○○猫を噛む》         (ペンネーム ポニョ)

●猫にドッグフードを与えて大丈夫ですか? (難易度★★★☆☆)
 答えはNOです。猫にドッグフードを与えると、タウリン欠乏症という病気を引き起こします。猫におけるタウリン欠乏症は雌の場合生殖機能障害、子猫の場合は発育障害、網膜の変性、心筋肥大(拡張型心筋症)です。タウリンとは猫にとって体内で合成できずに食事から摂取しなければならないアミノ酸、つまり必須アミノ酸であります。犬にとっては必須アミノ酸ではありませんので、ドッグフードには猫にとって十分なタウリンが含まれておりません。猫には必ずキャットフードを与えましょう。(Dr.宮川)


●猫を外に出さないとストレスがたまって病気になりませんか? (難易度★★☆☆☆)
 そのような事で病気になるという医学的データはありません。むしろ、外出させて起きる問題を考えてみましょう。まず、交通事故に遭います。その事で骨折や膀胱破裂等、身体に重大なダメージを受け、最悪、命を落とすこともあります。次に、他の猫に咬まれて傷口が膿むことがあります。その際に猫白血病ウイルス(FeLV)や猫エイズウイルス(FIV)に感染することもあります。これらのウイルスに感染して病気が発症してしまうと、有効な治療法もなくほとんど死んでしまいます。外出させなければこういった病気を防ぐ事ができますので、猫は室内のみで飼育してあげるのがベストなのです。(Dr.宮川)


●うちの猫は、ドライフードしか食べないの。。なぜ? (難易度★★★☆☆)
 猫は肉食動物です。本来、ハンティングしてエサを食べる習性を持っています。ですから、噛む、裂くといった本能は未だ飼い猫にも残っています。硬いもの(ドライフードなど)を噛むという行動は、猫本来の欲求を満たしていると言えます。
 また、猫の舌の表面には非常に硬くて鋭いトゲのようなもので覆われています。この舌を使って骨についた肉を剥ぎ取って食べるのです。この舌も柔らかいものを舐めるにはあまり向いていないので、缶詰を嫌う子がいるのです。(Dr.藤吉)


●ずばり、猫にしつけはできるのか!? (難易度★★★☆☆)
 基本的に猫は幼少時より必ず決められたトイレで排泄をし、食餌も量、回数ともに決められたとおりに出来ます。しつけが必要なのは、問題行動を起こさないためなのです。(たとえば、テーブルの上に乗るとか、家具や壁で爪とぎをするなど)小さいころから「いけないこと」「いいこと」を繰り返し教えれば、ズバリしつけはできます。また、環境を変えることで満足が得られれば、しつけをしなくても済むこともあるようです。(Dr.藤吉)


●犬と猫の肥満は寿命を縮める? (難易度★★☆☆☆)
 肥満によって病状が悪化するか、あるいは病気が誘発される疾患としては、心臓病(特に犬の僧帽弁閉鎖不全症)、気管虚脱、軟口蓋過長症(呼吸器系に弱点のある短頭種)、糖尿病、膵炎、椎間板ヘルニア、骨・関節疾患・・・・・等が挙げられます。また、原発(基礎)疾患が肥満をもたらす場合としては、クッシング症候群(副腎皮質亢進症)、甲状腺機能低下症、避妊・去勢手術・・・等が考えられます。
 解答はもちろんYESです。しかし、肥っていることがプラスに働くこともあるように思うことがあります。例えば膵炎などの病気で、点滴だけでは十分な栄養補給が不可能な場合には肥満の蓄積脂肪がエネルギー源となり、長期の治療に耐えうるケースがあります。また、車の下敷きになるような交通事故に遭っても、分厚い皮下脂肪や内臓脂肪がクッションとなり、死なずにすむ症例もあるように思えます。(Dr.田原)


●犬と猫はどうしてし心・脳血管疾患が少ないのか? (難易度★★★★★)
 人の心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血の原因である動脈硬化症は高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高血圧、加齢、喫煙(ニコチン)、遺伝、糖尿病、肥満、ストレスなどの要因が関わっているとされています。特に高コレステロール血症(悪玉コレステロール=LDLの増加)、喫煙、高血圧を3大危険因子と言います。
 解答は以下の通りです。犬と猫のコレステロールは悪玉1に対して善玉コレステロール(HDL)が10と善玉が圧倒的に多く存在します。人は1:2〜2:3で悪玉が優位です。ペットはタバコも吸いません。腎不全や副腎髄質の腫瘍(褐色細胞腫、アドレナリンやノルアドレナリン分泌)で二次性高血圧が起こり得ますが、人のように遺伝が関与する本態性高血圧症は発見されていません。動脈硬化は老齢犬や甲状腺機能低下症の犬、ミニチュア・シュナウザーの特発性高リポ蛋白血症(idiopathic hyperlipoproteinemia)で見られるとの報告があります。
 最近では、特に都市部のペットは高蛋白・高脂肪食に加え、運動不足、糖尿病、副腎皮質亢進症など「動脈硬化」を発生させる素地が育まれています。「突然死」の症例も少なくないと考えられるようになっています。症例報告もありますので参照下さい(下の写真)。(Dr.田原)

写真左;Textbook of Veterinary Internal Medicine(fifth edition, W.B.Saunders Company, 2000, p972). 甲状腺機能低下症による重度(650mg/dl以上)の高コレステロール血症犬に見られた「冠動脈硬化」(文字と矢印の所)の心臓。

写真中;Platt SR, et al. Canine cerebrovascular disease: Do dogs have strokes? J Am Anim Hosp Assoc 2003;39:337-342. 非対称性の中枢性前庭症状と小脳症状を呈した12歳のラフ・コリーのMRI像。 突然(急性)の発症で小脳に梗塞(矢印)が認められた。

写真右;写真中と同じ文献より引用。12歳のジャック・ラッセル・テリア。突然の認知障害(dementia)、旋回運動(circling)、片側の視覚障害(asymmetrical blindness)を呈した脳内出血(矢印)のMRI像。


いかがでしたでしょうか。それぞれ個性を生かした面白い内容に仕上がったと思います。明日から使える豆知識。お散歩仲間のマダムたちに思う存分講義しちゃってください。新たな愚問、質問もお待ちしています。遠慮せず病院で尋ねてみてください。では。

つづく。

固定リンク | 2008年10月28日【32】

ペット豆知識No.16-猫の下部尿路疾患(旧称 FUS)は夜間の帝王です-

猫に多い猫下部尿路疾患(FLUTD)

「卵が先か、鶏が先か」は、世の多くの女性がいくら整形しても「藤原紀香」になれないのと同様に、土鳩が鶏になれるわけはありません。「鳶が鷹を産んだ」と言うように、遺伝子学的にもやっぱり卵が先なのです。(この続きは最後)

 猫の慢性腎不全に続き、猫泌尿器シリーズ第2弾として、今回は猫下部尿路疾患(FLUTD:Feline lower urinary tract disease)について特集します。
※FLUTDはつい最近まで英名でFUS(Feline Urologic Syndrome)と言われ、和名では猫泌尿器症候群、もしくは猫尿路閉塞症候群と呼ばれていた疾患です。病態解明の進歩で現状ではFLUTDとなっています。(参考まで)

●血尿、頻尿、排尿困難、それがFLUTDの正体
 とにかく猫は泌尿器系が弱い。腎不全と共に下部尿路疾患も動物病院では本当によく見る病気のひとつです。それだけ罹りやすく、特にFLUTDは再発もしやすい病気なのです。症状や治療法などを説明しますので、Cat Freakの皆さん、是非参考にしてください。
 猫の来院理由の4〜10%は、このFLUTDだと考えられています。一見低いようにも見えますが、すべての疾患のうちの1割弱を占める病気というのはかなり多い疾患であると考えるべきです。
 このFLUTDは、血尿、頻尿、排尿困難を主徴(主な徴候)とする、尿路の疾患であり、2〜6歳の猫でよく発生します。他にも
・肥満の猫
・冬〜春にかけて発症することが多い
・30〜70%の猫で再発する

などの疫学的特徴があります。

 しかしながら、猫下部尿路疾患(FLUTD)と言うのは、さまざまな尿路疾患の総称であって、特定の病名ではないことに注意が必要です。尿石症、つまり膀胱結石や尿道結石、または結晶(砂粒)があったり、膀胱炎、膀胱感染、尿道炎などのいずれか、もしくはそれらの複数が『下部尿路』に発生したときに、FLUTDと呼ばれます。
 これらの症状や原因については後で説明するとして、まずは“下部”とはどういう意味なのか、泌尿器系の構造や解剖について軽く復習しておきましょう。

●『下部』尿路とはいったい・・・
 全身循環をした血液は、絶えず腎臓を通り濾過や再吸収を受けて尿となります。尿は腎臓(正確には腎盂=腎盤)を出て尿管を通り、膀胱に向かっていきます。ここまでの構造、つまり腎臓〜尿管までを“上部尿路系”と言います。ついで膀胱へと達した尿は“一休み”して、ある程度膀胱に尿が溜まったら、尿道を通り、尿道口から排泄されます。この膀胱から尿道口までの構造を“下部尿路系”と呼び、FLUTDはここのいずれかに障害がおきた場合にそう診断されるのです。
 もちろん上部尿路疾患(UUTD)もあります。しかし圧倒的に下部尿路疾患(LUTD)の方が臨床的に重要であるために、特集するに至ったわけです。

では症状を挙げてみましょう。お宅の猫はこんな症状でていませんか?
・血尿(尿中に血液が混じる。おしっこの最後の方で血が出るなど。)
・頻尿(何度もトイレに行ったり、トイレ以外の場所でもおしっこをする)
・排尿困難(グーッといきむ仕草をするが、出ない、もしくは少量)
・陰部を舐める(痛みがあるために、しきりに陰部を気にする)


 上記のうち2個以上あてはまれば、ほぼ間違いなくFLUTDとなっていると言えるでしょう。
 ではなぜ血尿が出るのか。なぜ排尿困難や頻尿となるのか。次はそのあたりについて詳しく探ってみようとおもいます。


●なぜ血尿に?なぜ膀胱炎に?なぜ結石が?

〃貲△慮彊

 血尿と血色素尿というものがあります。血色素尿とは、循環中に赤血球が溶血し、中のヘモグロビンという色素が出た結果、尿が赤くなるというものであって、赤血球が出てくる血尿とは区別されます。夏の鬼合宿で「監督のメニューきつすぎて俺なんか去年血尿でちゃったよ」と自慢してくる先輩には笑顔で見下して上げましょう。(暑さと重度の筋肉の使用で、溶血と筋色素の逸脱が起きて赤色尿がでる。血尿ではない。)
 したがって、血尿が出ているということは腎臓以降での出血があるという推測ができ、このほとんどは膀胱炎によります。
 膀胱炎は、細菌感染によっておきるのが一般的で、そのほとんどは大腸菌(E.coli)が、陰茎や膣から上行性に膀胱まで感染して発症します。細菌が膀胱粘膜に侵入して増殖し、膀胱粘膜は腫れ上がって出血し、炎症が起きることで膀胱炎となり、二次的に血尿が見られるのです。膀胱結石も、膀胱内を傷つけ炎症を惹起する原因のひとつです。(※尿道カテーテル挿入術も感染を助長し、膀胱炎の原因のひとつになる場合がある。) しかし、最近の知見では、FLUTDの実に60%が特発性膀胱炎といって、感染もなく、結石もない、つまり原因不明の膀胱炎であると見られています。現在ではFLUTDを特発性膀胱炎と言い換えることもできるほどでなのす。

頻尿、排尿困難の原因
 多くは膀胱結石に起因します。結石は、『何かしらの核』となるものがあって初めて結石や結晶となります。オスでは、尿路の構造上それらが尿道で詰まる場合があり、尿道閉塞として緊急的な疾患ともなりえます。閉塞した場合、高窒素血症から尿毒症となり、腎不全の末期のように多彩な症状が表れ、放っておけば死亡します。(後ほど詳しく)
 『何かしらの核』というのは、もともとできた結晶や、細菌であったり、膀胱粘膜上皮の細胞のかけらがそれにあたり、それぞれが合体して雪だるま式に大きくなっていきます。結石のできる部位によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と名前がわかれ、また結石の種類も豊富です。(下表参照のこと)
 その多く(60%以上)はストラバイト結石(正式名称は、リン酸アンモニウムマグネシウム尿石)で、FLUTDではもっとも一般的な尿石です。これは、尿のpHが上昇し、アルカリ性となること、さらに名前の通りアンモニウムマグネシウムリン酸塩が多量に含まれる尿で形成されやすくなります。こうなってしまう背景には、不適切な食餌が原因となっていて、食事内容の変更が望まれます。(ちなみに、猫の尿石症の95%は細菌やウイルスの関与しない非感染性のものである。犬では感染が関与する。)

 これらの結晶、砂粒あるいは細胞塊(これらをマトリックスという)または結石が物理的に尿路を狭くし、あるいは閉塞することで頻尿や排尿困難の症状が現れます。しかも結石は物理的に膀胱を傷つけるために炎症を起こして血尿が発生するのです。
結石はFLUTDのうち20%を占め、膀胱炎よりも比較的発生度は低いようです

(発生頻度の割合は、下表参照のこと)

●FLUTDが救急疾患となる時
 タイトルにも掲げたようにこの病気は「夜の帝王」となる場合が少なくありません。
 特に雄猫は結石や砂粒、出血性膀胱炎の血餅(けっペイ)、膀胱炎の炎症産物(=塞栓子)が尿道に栓(プラグ)を形成して排尿ができなくなります。こうなると、分(極悪は秒)刻みでトイレに行く、あるいはトイレから出ない、悲鳴に近い声をあげるなどして、飼い主の不安を掻き立てます。この状況を放置すると、腎不全になったり、最悪の場合膀胱破裂に至ります。早急に病院に行き、尿道を閉塞している「栓」を除去してあげなければなりません。症例によっては、尿道炎で狭窄した尿道をカテーテルで拡張することも必要です。救急疾患なのです。雌の場合も止血剤や抗生剤の投与で症状を改善してあげる必要があります。結構大き目の膀胱結石を発見することも稀ではありません。「夜の帝王」ごとく、夜間病院でも最も多い救急疾患の一つであることに間違いありません。★



●水を飲ませることこそ治療の第一歩
 さきほど疫学の部分ですこし触れましたが、あれ?なぜ冬から春にかけてFLUTDが多発するの?と思った方、あなたはヒジョ〜に鋭い。なぜでしょう。
 その背景には、寒冷のために猫が動かなくなり、その結果、飲水量が低下するためではないかと考えられています。人の医療でも、下部尿路疾患がある場合、「水をよく飲むようにしてください」と指示されます。飲水量とFLUTDの関係、う〜む何かにおいますね。
 そもそも尿路系は独特な防御機能があり、そのひとつは、尿をこまめに排出することで常にきれいな環境を保持しようとしていることが挙げられます。例えていうなら、常に流れがある川と、雨上がりの水溜りや池では、澱(よど)みの具合が違うのは当たり前です。私の母校のすぐ近くにある皇居のお堀は、目もあてられないほど真緑に澱んでいますし。。。したがって、飲水量の増加は常に新鮮尿が産生されて尿意の刺激を促すため、膀胱で“一休み”している時間が少なく、よどむことなく排泄されます。つまり、結晶が凝集してマトリクスとなる時間を与えない環境が作られるのです。
 冬から春にかけては、こうした飲水量の増加が望めなくなるために、FLUTDのリスクがあがる要因となるのです。(ちなみに、猫は犬に比べて体内の水不足に関して無頓着で、体重の4%ほどの水和不足は無視するといわれています。)
 ですから、水の確保は予防にも治療にも非常に大切です。現在、FLUTDの治療に関しては食餌療法が主軸となります。とくに缶詰フードは70%以上が水分でできており、10%未満しかないドライフードと比べると水分確保に有用なことがわかります。また、FLUTD用のフードは意図的に塩分量を増やしており、自然と水を飲ませる工夫もしてあります。


●食餌療法がカギとなるFLUTD
―特発性膀胱炎の治療―
さて、ただ膀胱炎を起こしているだけなら話は簡単です。ほとんどは非感染性と言われてはいますが、念のため抗生剤を飲ませて、FLUTD用食を与え、しっかり飲水管理をすれば、通常1週間もたつと完治します。

―尿石の治療―
が、尿石の場合はそう簡単にはいきません。ストラバイト尿石は尿を酸性に傾けて、マグネシウムの制限、尿量の増加を目的とするストラバイトケア食を与えて石を溶かすのが効果的です。しかし、溶かせきるには時間がかかります。大きさにもよりますが3ヶ月は見たほうがいいでしょう。
 もっと悪いのは溶けないタイプの尿石です。尿石症のほとんどはストラバイト(65%)ですが、そのほかのシュウ酸カルシウム(20%)やリン酸カルシウム(2%)、尿酸アンモニウム(6%)は溶けません。そうなると、完全に除去するには手術しかないのです。(もちろん結晶の状態では手術の必要はありません)

 ごらんの通り、結局のところ、FLUTDは食餌療法が軸になります食餌療法(尿pHのアルカリ化、低マグネシウム、低リン、高ナトリウムなど)と、水分の確保、そして抗生剤の投与が効果を発揮します。
血尿、頻尿、排尿困難、の3大条件のうちどれかが当てはまるようなら、効果的な治療がありますからスグ動物病院に連絡するようにしましょう。


●FLUTDと腎不全のジレンマ
 中年齢(2〜6才齢)で多いFLUTDですが、こういう話をよく聞きます。
『何年も前にストラバイト結石が出来て、それ以来ストラバイトケア食を他の病院でもらっています。いま13歳ですが、いつまでこのご飯を食べさせればいいのでしょうか。』
 答えは、止めて結構だと思います。もちろんまだ結石がある場合は別ですが、そもそも猫は非常に腎不全になりやすいので、10歳を超えたら、予防的にも腎臓食に切り替えることをお薦めします。尿石予防食は、塩分たっぷりで猫にとっては結構おいしいです。しかし、しょっぱいご飯は、腎臓や心臓に負担をかけます。ほとんどすべての腎臓食やシニア食はFLUTDにも配慮した成分になっています。(それだけFLUTDが多いということですね)すでにFLUTDが直っていれば、腎臓食、あるいはシニア用のご飯に変えることを相談してみてはいかがでしょうか。

旧称FUSの時代、尿道が閉塞する原因は「尿石が先にありき」の感が強かったように思われます。現在では尿石よりも膀胱炎のほうが主因のようですが、未だ「特発性出血性膀胱炎」の原因は不明です。これが究明されなければ、「猫にまたたび」なる特効薬は生まれそうにありません。

文:小川篤志

固定リンク | 2008年10月26日【33】

ペット豆知識No.15-猫に多い慢性腎不全。人やマウスと異なり、猫の腎不全は食事療法がその進展(悪化)を抑制します-

猫の慢性腎不全

さて、突然ですが猫に多い病気、なにがあるかご存知ですか?まずは慢性腎不全ですね。それから心筋症(HCM:肥大型心筋症)、悪性腫瘍、感染症も多いです。猫エイズ猫白血病など前にも特集しました。あと猫下部尿路疾患(結石や膀胱炎など)、病気ではないですが交通事故ケンカ傷もよく見かけます。このなかでも、やはり慢性腎不全が猫の主要な死因であることはもはや常識となりつつあります。
今回は、猫に多い慢性腎不全についてお話しようと思います。


-なぜ猫に多いのか-
まず、慢性腎不全の原因について話しておきましょう。
 一般的なのは、家族性腎症といって、遺伝性です。猫では、アビシニアンやペルシャ種では他猫種の2倍以上の確率で腎不全が起きます。犬では、シーズーやゴールデンリトリバーの先天性腎低形成などです。後天性の原因には糸球体腎炎が多いとされ、これは免疫複合体が糸球体に沈着して腎不全を起こすと考えられていますが不明の点が多々あります。他にも、全身性エリテマトーデス(SLE)FIP(猫伝染性腹膜炎)腎毒性物質(エチレングリコールなどの不凍液、ヒ素、銀、鉛などの重金属、一部の抗生物質などの薬剤)など、さまざまな要因で腎不全が発症します。犬に比べて慢性腎不全が圧倒的に猫で多いにも関わらず、“なぜか”という疑問に対して一向に決定的な理由付けができないでいるのは、こうした腎不全の進展要因が多数あるため、決定打にかけるのが現状です。院長コラムには「慢性腎不全が猫に多いのはなぜか」に関しての仮説が提唱されているので、是非一読ください。

-腎臓のお仕事-
腎臓は背中側にある左右一対のソラマメ型の臓器です。むかし、お金に困って腎臓を売ったとかなんとかいうニュースがありましたね。一個で大丈夫なのかと心配になりますが、腎臓は非常にタフな臓器なので片方をとったくらいではびくともしません。まずはそんな肝腎かなめの腎臓が担う3つの機能について説明します。

(1)血液をろ過して尿を作る(尿生成)
(2)血液のなかから必要な物質と必要でない老廃物を分別し、それぞれ再吸収したり排泄(尿として)することで、からだのバランスを整えている(物質の吸収)
(3)血圧の調節や、造血を指令する(体循環)


 このうち1と2は、ほぼ同じことを言っています。血液を、腎臓の糸球体という『ろ過装置』で血球やタンパク質などの必要な成分を漉し取り、あとの残りは尿細管に流れます。
血球成分や大きなタンパクを取り除いた血液は、尿の元となり、これを原尿と呼びます。腎臓ひとつに20万以上の糸球体があり、それぞれに尿細管が付属しています。この長い尿細管を通るあいだ原尿は、じつにその99%が再吸収を受け、体内へと戻ります。では、残りの1%はどうなるのでしょう?尿になるのです。たとえば一日1Lの尿をする人では、その日つくられた原尿はなんと100Lにもなり、そのうち99Lは吸収されているということです。では、再吸収されるものと、されないものの違いは何でしょうか。
 再吸収される物質のほとんどは水分です。そのほか、Na、K、Cl、Caなどの電解質、小さいたんぱく質、ブドウ糖、アミノ酸などが多いです。また尿細管では不要な物質の排泄(分泌)をする機能があり、それは、余分な水分、カリウム、リン、尿素、クレアチニンなどがあります。
 また、腎臓は非常に血流の豊富な臓器です。それゆえ、その血流量の多さを生かして血圧の調節(レニンの分泌)も同時に行います。さらに、赤血球が足りないと感知すれば造血指令ホルモン(エリスロポエチン)を放出するという、循環器としての一面ももっているマルチな臓器なのです。


-腎不全になると…-
 ですから、腎不全の状態になれば、これらの機能がうまく回らなくなります。さっきの1〜3に当てはめれば・・・

(1)原尿を濃縮(再吸収)できず、色がうすくて、臭いもきつくない水のようなおしっこがたくさん出ます(多飲多尿)。尿比重の低下が見られます(1.035以下)。
(2)ろ紙(糸球体)のフィルターがボロボロになり、大きなたんぱく質などがろ過されず、そのまま尿にでてきてしまいます(たんぱく尿)。しかも、尿細管は再吸収できずにジャージャー排泄してしまうため、脱水の進行とともに電解質やカルシウムなどのイオンバランスが崩れ、全身的な影響が現れます。排出しなくてはいけない尿素やクレアチニンが排出できずに体内をまわり(高窒素血症)、やがて尿毒症となります。
(3)腎不全となることで、レニン(血圧を上昇させるホルモン)の放出がさかんになり、高血圧に。また、高血圧は腎臓へ直接ダメージを与え、さらに高濃度のタンパク尿が見られます。そしてエリスロポエチンの放出もなくなって来てしまい、腎性貧血が発症するに至ります。


(1)の症状は、多飲多尿と呼ばれる症状で慢性腎不全では必ず見られる症状です。尿がたくさん出るので水を飲む。たくさんビールを飲んで尿がたくさん出るのとは意味がちがいます。あくまで尿が先行するのです。
(2)のイオンバランスの不均衡は、全身へのダメージを与えます。脱水に伴って電解質の異常も散見され、その中でもカルシウムの欠乏はさらなる病気を招きます。カルシウム(Ca)とリン(P)は切っても切れない間柄で、Pが上がればCaが下がるというような仕組みになっています。
 腎臓ではビタミンDを活性型ビタミンDとする機能もあり、それが障害された結果、消化管からのCa吸収が障害され、血中Ca濃度は下がっていきます。Pはほとんどが腎臓から排泄されるため、腎不全時にはリン排出が疎かになり高P血症となります(Pを制限する必要性)。高P血症のため、Caはその濃度を下げるため細胞内へ移動し、細胞内で障害を惹き起こします。腎臓の細胞も例外ではありません。、ナトリウム(塩分)の多過は血圧を上げやすくするため、制限しなくてはいけません。
 高窒素血症の原因である尿素クレアチニンなど(窒素化合物)は食物中や筋肉のタンパク質から分解されて作られますが、通常これは尿と一緒に排泄されるはずです。腎不全のように排泄できなくなってしまった場合は、これらが体に蓄積して尿毒症を引き起こし、多様な症状が発現します。慢性の嘔吐と下痢、神経症状=けいれん(これらを尿毒症の3主徴という)、食欲廃絶、異常呼吸、脱水と貧血、乏尿や無尿、口腔潰瘍、舌の壊死、口臭、沈うつ、嗜眠などの症状が起こり、もはや末期の腎不全となります。
(3)の高血圧とタンパク尿については腎不全の憎悪因子であり、貧血は体にとても負担をかけ、腎臓の細胞に対しても酸素や栄養補給の観点からダメージを与えることになります。

 これらは、いっせいに症状がおきるわけではなくて、徐々に(慢性的に)進行する疾患です。それぞれには全4期にわたるステージがあり、各ステージを登っていくことはもはやとめることはできないのです。

第鬼(予備能力の減少:正常の50%以下)・・・臨床兆候はなし。腎臓が徐々に障害を受ける
第挟(代償性腎不全期:正常の50〜30%)・・・多飲多尿の症状。腎機能検査の軽度異常
第郡(非代償性腎不全期:30〜5%)・・・腎不全期。CreおよびBUNの上昇
第鹸(尿毒症期:正常の5%以下)・・・尿毒症が併発。多彩な臨床症状。末期腎不全。


これについては、下の表にくわしく載せてありますので、参考にしてください。


-治療法-
 腎不全は、対症療法のように、ひとつひとつの症状に対して地道にたたいていくというスタイルで治療していきます。が、人間のように透析をすることは理論的にはもちろん可能ですが、保険の利かない獣医療では金銭的なデメリットが大きいこと、非常に煩雑な作業に加え、動物がじっとしていてくれないという前提があるために、動物医療で実際に行われることは殆どありません。ではどうして治していくのか。早期からの食餌療法と、補液療法は生存期間を大幅に伸ばすことができる為、この2本を柱にして治療計画を立てます。
今までの話を総括して、治療法についてまとめてみましょう。

/嬋堊瓦凌餌
 腎臓に負荷のかかる物質を排除したごはんが腎臓食です。つまり、適たんぱく質、低ナトリウム(減塩)、低リン食の3大条件がそろう食餌を与えます。ここで人(マウス)と猫(犬も同じ)の腎不全の大きな相違点について述べます。人の腎臓が一旦慢性化するといくら食事療法を行ったとしても、時間の経過に伴い、直線的で右肩下がりの機能低下(糸球体硬化が進む)が起こります。これは透析の導入時期をほぼ正確に推測可能なくらいです。猫ではこの人で見られる右肩下がりの現象が食餌療法で抑制可能です。しかもかなりの期間直線的に機能が維持されることが多々見られます。勿論、好き放題の食生活をしていれば、腎機能の低下のスピードは速まります(このことを腎不全の進展あるいは憎悪という)。また、猫では人程にタンパク質を制限した低タンパク食では、中等度に制限した食餌よりも腎不全を進展させることが実験的に証明されています。勿論高タンパク食は論外です。このことから猫では中等度タンパク制限食のことを「適タンパク食」と呼んでいます。タンパクは腎臓の血流量を増大させることから制限が必要です。塩分も体液量が増えることで同様に糸球体に負担を掛けます。Pは前述したようにCaの細胞内流入で腎臓の細胞障害を進展させるということです。ただし、腎不全の動物は食欲低下していることが多く、うまく食べてくれるかどうかがカギです。どうしても食べない場合は強制的に給餌する必要性も生まれます。

脱水の補正
 脱水を防ぐため、最近よく水を飲むからといって水を制限しない。腎不全の進展をはやめることになります。さらに水も飲まなくなってきたら、皮下点滴を自宅療法として選択するのも一つです。

G毒素を体にためこまない
 活性炭は、消臭剤や水なんかの不純物質を吸着するのによく使われますね。実は医学的にもよく用いられるポピュラーなものなのです。ここでは、尿毒素を吸着するために活性炭を内服します。尿毒素物質はBUN(血中尿素窒素)やCre(クレアチニン)、Pなどをはじめ、約3000種もの物質があるとされています。活性炭を飲ませることで、消化管中の尿毒素を吸着して、便と一緒に排泄してしまうのが目的です。

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 血管拡張剤として使用されるのがACE(=アンジオテンシン変換酵素)阻害薬です。猫の実験的な慢性腎不全モデルではACE阻害薬が糸球体の血圧(=糸球体濾過圧)と糸球体の肥大を抑制することが証明されています。自然発症の慢性腎不全猫でもその効果が示唆されています。これによって血圧(=糸球体濾過圧)が降下し、腎臓にやさしい血行動態となります。貧血に対しては、ヒトエリスロポエチン製剤や輸血、またサプリメントなどがあります。

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 腹膜透析があります。これは手術で開腹し、ドレイン(管)を取り付けてから一日何回も透析液をおなかの中にいれて透析を行います。しかし、末期の腎不全の状態で手術をするリスクを容認し、かつ非常に大変な作業を一日何回も行う了承を得られない限り、滅多に腹膜透析をすることはありません。あくまで最後の手段です。

 さっき、腎臓がタフな臓器と言いました。腎臓は非常に代償性(どこかが悪くなると、ほかのどこがが人一倍がんばって代償する体の基本的機能)に優れているため、少々のことでは症状がでません。したがって、片方の腎臓をとっても、もう片方ががんばるため影響があまり出ないのです。ところが、4分の3以上がダメ(75%以上)になると、一気に悪化し、とめようもない進行性腎不全状態に陥ります。つまり血液検査で引っかかるレベルでは既に75%以上の腎臓が機能していないということを覚悟するべきです。

-猫ドックや犬ドックの検診を-
 通常、動物病院で腎不全と診断されるのは第郡ステージであることが一般的です。早く気づけばそのぶん長く生きられる可能性も高くなります。第鹸になってしまうと、もはやニャンともしがたい難しい状況となります。が、最終の第献好董璽犬任陵莟,盖ではありません。これは上記の治療を集中的に実施し、第轡好董璽犬泙撚善させることも可能です。
 高齢になれば、予防的に腎臓食を与え始めたり、毎年2回くらいの健康診断をお薦めします。
特に早期からの食事療法は生存期間を大幅に延長させることができます。ぜひ人間ドッグよろしく犬ドックや猫ドックの検診をお願いします。

-最後に-
 さて、長々と腎不全に関して語ってまいりました。ご理解いただけたでしょうか?
参考程度に書きましたが、病態生理まで飼い主さんが知る必要はありません(さんざん書いておいてすみません笑)。それよりも、特定の症状を覚えておいていただければ、少しでも病院に早く連れてこられるかもしれません。多飲多尿、長期にわたる体重低下、慢性の嘔吐、毛や皮膚の退色、などはわかりやすい症状です。に加え、クッシング症候群や、糖尿病、子宮蓄膿症、甲状腺機能亢進症などとも重複する症状ですから、腎不全に限らず覚えておいて損はないとおもいます。

 あれ?慢性腎不全はわかったけど、急性もあるんじゃないの?とお思いの方、いい質問です。しかし急性腎不全の機序は、慢性腎不全とはまったく違うのです。それについてはそのうち特集を組むとしましょう。
 そろそろ腎不全もおなかいっぱいになったようなので、このへんでやめておきましょう。お終いにゃん。

文:小川篤志

固定リンク | 2008年10月20日【31】

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