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2009年8月の記事

ペット豆知識34-犬猫の嘔吐・下痢症、特にウエルチ菌とカンピロバクター菌について-MRT「ペット・ラジオ診察室」・8月20日放送分

今回のテーマは犬と猫の嘔吐・下痢症です。嘔吐・下痢症は、日頃最も良く遭遇する病気の一つです。人では食中毒を思い浮かべる方も多いと思いますが、犬の嘔吐・下痢症の原因は何でしょう?
 ちなみに、人の食中毒の原因は患者数の多いものから、
1.ノロウイルス感染症:冬に多く、カキなどの貝類を介した感染・発症がよく知られています。※犬、猫ではノロウイルスは感染しませんので安心して下さい。
2.サルモネラ感染症:家畜、家禽、ペット動物、環境中などに広く存在し、食中毒の主な原因食品は食肉、食鳥肉、卵などの畜産品、およびそれらの加工食品です。※主としてSalmonella Typhimuriumの感染により、犬猫で嘔吐・下痢の原因となりますが、感染しても発症しないことも多いとされています。犬と猫のサルモネラ属菌保有率は10%程度といわれています。
3.ウェルシュ菌:健常人の便からも100%検出されます。加熱後長時間室温に放置された食品を食べることにより発生します。
 その他、4番目が腸炎ビブリオ、5番目がカンピロバクター感染症、6番目がブドウ球菌と続きます(2002年、厚労省発表データ)。

※※※例えば人で重篤な症状を呈する腸管出血性大腸菌(O157、べロ毒素を産生)を実験的に犬に投与しても、糞便中に生菌が排泄されるものの、感染は成立しないという、実験結果が報告されています(日獣会誌、Vol.57、pp326-329、2004)。要は、ウイルスや細菌の病原性は、ヒトと動物種間で全く異なることを知らなくてはなりません。

 今回のテーマである犬猫の嘔吐・下痢症はほとんど毎日診る病気で、一次的かあるいは二次的かは判断できないケースも多々ありますが、全体の7〜8割で悪玉菌が検出されます。かつ、そのほとんどは抗生物質の投与に反応して治ります(後に詳述)。

 そこで、まず犬・猫の嘔吐・下痢症で考えられる一般的な原因について記します。
〆拔:カンピロバクター、ヘリコバクター、サルモネラ、ウェルシュなどが原因菌として挙げられます。
⊃物アレルギー:アレルギー検査結果に応じて食餌を選択します。
L啅(猫):猫草や毛玉除去剤を与えます。
ぐ枴:石、竹串、釣り針、木の実、おもちゃ、布、紐…挙げれば切りが有りません。特に、現在日本での登録犬種の第1位であるミニチュア・ダックスを飼われている方は要注意です。異物を食べてしまう犬種の“ダントツ”ナンバーワン・ドッグです。胃の幽門や腸に詰まると腸閉塞を惹起し、激しい嘔吐が見られます。
テ皺兵栖:膵炎(”雑食”系の犬では全く珍しくない)や胃炎(ヘリコバクター・キャニス菌も最近では報告されています)、胃潰瘍、稀に胃癌などもありますが、犬・猫では内視鏡の実施に際して麻酔のリスクなどの制限があります。
腎不全:「ペット豆知識の腎不全」を参照して下さい。
Т梁 γ斉纂栖:レプトスピラ症、肝臓癌、種々の肝炎など。
┝鞜:腸管型リンパ腫、腺癌など
ウイルス性胃腸炎:パルボウイルス、コロナウイルス、ジステンパーウイルス、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルス感染症による二次感染など多くの原因によります。
内分泌疾患:副腎皮質機能低下症や糖尿病など。
寄生虫:瓜実条虫、鞭虫、鉤虫、回虫など。
等々、実に様々な原因で生じます。

 繰り返しますが、犬猫の嘔吐・下痢症は細菌性のケースが少なく有りません。確定診断には、糞便中の細菌検査をして、菌の種類を同定する必要が有りますが、それには通常数日を要します。しかし、幸いなことに、日頃の診療において即時に診断することができる菌が2種類ある。“ウェルシュ菌”と”カンピロバクター菌”です。しかも、この2種の菌は犬・猫の嘔吐・下痢症の7〜8割を占めます。以下にそれらの特徴や治療法、注意点について述べます。

★ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は“芽胞”というものを形成するため、形がとても特徴的です。芽胞未形成の状態では、他の菌(桿菌)と区別がつきませんが、芽胞を形成すると一変して、顕微鏡で見ると安全ピンのような形になります。そのため、他の菌と容易に区別できます。
★そして、この“芽胞”形成は乾燥や熱に抵抗性を示します。つまり、近所の散歩コースなど、乾燥した土壌や加熱処理を行った食品中でも長く(ウェルシュ菌は破傷風菌などと近縁で芽胞菌であるため、環境中で数年生存できる)生きることができる“たくましい菌”なのです。人や動物の胃から肛門までの消化管内に存在し、特に腸には正常な場合でも存在する常在菌でもある。
★このように、ウェルシュ菌は健康な犬猫の腸内にも存在する菌ですが、問題は“芽胞”を形成するか、しないか、です。この“芽胞”を形成する時に毒素(エンテロトキシン)が産生され、嘔吐・下痢などの症状となって現れます。健康な犬猫では芽胞を形成したウェルシュ菌が糞便(腸管内容物)1gあたり1000以下であるのに対し、下痢、嘔吐の症状のある犬猫では1gあたり100万以上に増殖しています。
★それでは、どのような原因で“芽胞”は作られるのか、考えてみましょう。種々の要因が挙げられんすが、まずは散歩中に芽胞化しているウェルシュ菌を、食糞として体内に摂取することです。その他、ドックフードをいきなり他の商品に変えたとか、お父さんのおつまみをもらってた、食欲が無いので色々なものを与えた、病院に連れて行った、シャンプーをしてもらった、手術をした、飛行機に乗せた、などなど・・・食餌の変更やストレス、基礎にある病気(持病)の悪化、ステロイド剤や抗生物質、抗ガン剤の投与といった原因により、腸内でのpHがアルカリ性に傾き、“芽胞”形成が促される為とされます。
★下痢、嘔吐の他、食欲不振、元気消失といった症状が見られますが、食欲不振と腹痛だけが顕著な場合も少なく有りません。下痢は通常、数日間続きます。
★治療は抗生剤の投与であり、約1週間投与します。多くの犬猫では3〜5日で改善が見られます。ただし、早めに抗生剤投与を中止してしまうと再発することが多々あるため、勝手に薬を止めないようにしましょう。
★さらに、多頭飼育の場合、食糞により次々と嘔吐・下痢を発症してしまうことがあるため、患畜の隔離などを行い、感染の広がりを防ぎましょう。


 もう一つの暫定診断できる菌が、カンピロバクター(Campyrobacter sp.)です。
★カンピロバクターはS字状、または螺旋状に湾曲した菌で、回転運動を行いすばやく動きます。酸素濃度3〜15%(空気中の酸素濃度は約20%)を好むため、便を採取後は素早く顕微鏡検査に供します。空気(酸素)に曝されない“fresh”な便でないと、カンピロバクターは死滅し易く、運動性が低下します。
★カンピロバクターは最初に述べたように、人では食中毒の原因となる代表的な菌であす。
★この菌は犬猫も含め、様々な動物の腸内に存在しますが、犬猫のカンピロバクター分離率は文献により大きな差が見られ、0〜50%です。年齢、環境、他の疾患の有無などにより、カンピロバクター分離率は大きな影響を受けます。※犬や猫での詳細な調査は少ないが、教科書では1%前後が保菌していると考えられてます(動物の感染症<第二版>小沼操ら編集、近代出版、2006年、p243)。
★ただし、6ヶ月以下の子犬、子猫は6ヶ月以上の犬猫に比べ、高い分離率となります。これは、年齢と供に免疫力が高まるためと考えられています。加えて、多頭飼いではストレスの増加、頻繁な食事の変更、犬猫同士で病原菌を移し合う、などの理由により分離率はさらに高くなります。ある文献によると、多頭飼育の犬では分離率87%、猫では75%となっています。
★症状は下痢(多くは5〜15日間)、嘔吐の他、食欲不振、発熱などが挙げられます。無症状の犬猫(いわゆるキャリアー)も多く、子犬や免疫力の低下、ストレス、あるいは他の疾患の存在により発症し易くなります。
★少し詳しい話になりますが、犬猫のカンピロバクター属の中で重要なものは、Campylobacter jejuniと Campylobacter upsaliensisと考えられるようになっています。犬猫のカンピロバクターの最も多くを占めるものがC.upsaliensis、次いでC.jejuniですが、文献によると分離率はそれぞれ65%、22.5%と必ずしも高率では有りません。
★一方、人での感染はC.jejuniが最も多く、次いで約10%がC.coli、極少数がC.upsaliensisなどぼ他菌となっています。
★そして最も気になる事ですが、我が家の犬猫がカンピロバクターを保菌あるいは下痢として排泄していれば家族にも感染するのかという、と言う疑問。答えはイエスです。ただし、先に書いたように、犬猫からは(特に成長してからは)C.upsaliensisが最も多く分離されており、人での感染が最も多い菌種であるC.jejuniとは異なるため、人のC.jejuni感染症で犬猫が感染源となっているケースは少なく、例えば人のC.jejuniによる食中毒のうち、6%が子猫との接触によるものとの報告が有ります。
★ペットから菌をもらってしまう可能性は低いとは言え、ゼロではないので、子供さんが子犬、子猫を触る際には特に注意しましょう。
★また、犬猫で最も多く見られるC.upsaliensisが、(C.jejuniよりは病原性は劣るが)人の腸管感染症の原因となることもあり、犬猫が人のC.upsaliensis感染源として重要なのではないか、と言われ始めています。C.upsaliensisは犬猫には症状を示さないと言われています。


★★犬猫の嘔吐・下痢症は最も一般的な疾患である一方で、子犬や子猫では脱水や低血糖を起こしやすく、致死的となる場合も少なく有りません。そのため、特に早めの来院を心がけて下さい。
★★また、成犬・成猫であっても経過が長引いたり、ケチャップ状の血便や血液混じりの嘔吐を呈するようになります。さらに重篤化すれば、炎症性腸炎や膵炎を併発することも稀ではない為、甘く見すぎないようにしましょう。
★★犬猫の糞便中の細菌が人への感染源になることがあるため、特に小さいお子さんのいる家庭で子犬・子猫を飼い始める場合には、動物病院での早急な糞便検査が必要です。

文責:たばる動物病院本院獣医師 棚多瞳(たなだひとみ)


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